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起業したい会社員に「アイデア不要」と伝える理由 起業の正攻法は「すでに自分ができていること」

東洋経済オンライン / 2024年11月24日 17時0分

手紙を送ったYさんの行動力は素晴らしいですが、業界知識も商品企画開発の経験もなく、その企業が持つリソース(生産設備や人員など)についても理解しておらず、金型や資材調達のコストについても考慮していなかったのです。

また、流通についても何も知らない状態でした。市場調査を行ったわけでもなく、自分が欲しいグッズの案をただ送りつけただけの状況だったのです。実際、Yさんはそのアイデアを発明品コンテストにも出しましたが、採用されることはありませんでした。返事をもらえただけでもラッキーだったと思います。

Yさん自身は、便利グッズを考案することを楽しんでいましたので、これが趣味であればそのまま続けてもよかったと思います。しかしあくまで起業を目指していました。そこで私は、次のようにお伝えしました。「正直、向いているとは言えない発明よりも、むしろYさんにとって『すでにできていること』をビジネスにしたほうが早いです」。

実はYさんは会社で人事の専門家として活躍しており、同僚や後輩から仕事や人生に関する相談を多く受けていました。発明よりも、人のキャリアや適性についての相談に乗るほうが、彼女にとっては慣れ親しんだ活動なのです。

そこで私は、まずはメインのサービスとして人事のコンサルティングや代行を提案しました。発明はあくまでその延長線上に位置づける。例えば、人事部の研修に使えるゲームや、悩みを吸い上げるための制度の開発など、別で生かしたほうがいいと考えました。

Yさんは現在、中小企業専門の人事コンサルタントとして、また社内面談を担当するカウンセラーとして活動し、月に30〜50万円の売上を上げています。将来的には、社内面談のカウンセラー資格を開発し、スクールを経営することを計画しています。そして、そのスクールの教材として自身の発明品を活用することを夢見ているのです。

「メンター」に憧れてはいけない

「メンターを作れ」。これは、今やどの起業本にも書かれているアドバイスの一つです。メンターとは「指導者」や「助言者」という意味で、自分の成長をサポートしてくれる存在です。

起業において、メンターを持つのはいいことだと思います。なぜなら、起業には悩みや課題がつきものであり、それを相談できる相手は限られているからです。家族や身内に相談したり、弱音を吐いたりすると、心配されたり反対されたりする可能性が高い。

そうした状況を考えると、「自分が目指している道をすでに歩んで成功している人」がメンターなら理想的です。ただし、気をつけなければならない点が一つ。メンターが「あまりに遠すぎる存在」である場合、あまり参考になりません。

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