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「進歩的な君主」がとてつもなく残虐にもなった訳 制度によって人は善人にも悪人にもなり得る

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 11時0分

レオポルド2世は、華麗な装飾を施した公共建築や公園を造らせ、ベルギー国内では情け深い改革者という評判を得ていましたが、王の個人所有の植民地であるコンゴ自由国では、誰に咎められることもなく専制政治を行い、彼の残虐行為は隠蔽されました(画像:歩き目です/PIXTA)

横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。

では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。

今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

「建築王」の異名を取ったベルギーの君主

1865年、アメリカで奴隷制度が終わりかけていた頃、ベルギーではレオポルド2世が王座に就いた。この30歳の君主は、改革者として支配するだろうという期待が高かった。当初、彼はその期待を裏切らなかった。

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無料の初等義務教育、男性普通選挙権、児童労働に対する厳格な法律の導入といった、人気の高い進歩的な政策を採用した。週末という概念の最初の兆しも見えた。日曜日を休日とすることが義務化されたからだ。

レオポルドは、「建築王」という新しい異名も取った。彼は国を治めている間に、華麗な装飾を施した公共建築や公園を造らせた。広大な土地の区画や田園地帯の地所を次々と獲得すると、王室の信託団体を設立し、将来のすべてのベルギー人が、王の楽しんだものを楽しめるようにした。

というわけでレオポルド2世は、ベルギー国内では広く労働者の権利を改善し、教育を拡張し、見事な公共施設の数々を建設した。そして、王国内では情け深い改革者という評判を築いた。

だが彼にしてみれば、ベルギーの価値など高が知れていた。あるときなど、「Petit pays, petits gens(小さな国、わずかな人)」と蔑んで言っている。彼は、もっと大きなものを夢見ていた。

ある日レオポルドは、『ジャワ、あるいは植民地の運営の仕方(Java, or How to Manage a Colony)』という本に、思わず引き込まれた。それは、植民地建設のための一種の実用ガイドであり、ジャワ島について書かれた本だった。

レオポルドは、すっかり虜になった。唯一の問題は、ベルギー国民の大半が、自国の王が魅了されたばかりのものに共感を覚えなかったことだ。植民地の建設は、ベルギーのような小国にとってはあまりに高価に思えた。

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