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ホテル事業で260億稼ぐ「あの通販会社」の勝因 ベルーナ流「浪漫を感じるか」M&Aの舞台裏

東洋経済オンライン / 2024年11月28日 8時40分

もちろん、M&Aの判断材料にはマーケット状況や費用対効果、収益性なども含まれるそうだが、それをクリアすると最後は、自分自身の「浪漫」の感覚が決め手となるのだ。

「M&Aの話がくるリゾートホテルは、たいていロケーションがいいんです。福島にある『裏磐梯レイクリゾート』も、北海道の『定山渓ビューホテル』も、おそらく界隈で一番よいロケーションで、浪漫を感じました。だから躊躇なくリノベーションができたんです」と振り返る。

そして、そうやって腹をくくって投資を決断した後は、「その地域でほかのホテルが儲からなくても、うちだけは確実に稼ぐためにどうしたらいいか」と戦略を練る、とも。

「基本的に、地方の旅館やリゾートホテルはそこまで儲かりません。それぞれの地域でナンバーワンを目指すくらいでないと、高収益は見込めないのです。定山渓でも、当社が全体の約40%の集客を担っています。

儲からない地域で、例外をどう作るかを突き詰めて考えています。高収益を実現するには競争力が必要です。競争力を生みだす改善、改良、改革のために、従業員のモチベーションをどう高めるかを常に意識して経営しています」

浪漫を妨げる要因は「人」に

安野社長が実際に視察してM&Aをする割合は、3、4軒に1軒程度だ。ただ、最近は浪漫を感じるような物件が減っていると嘆く。M&Aをする企業が増えて物件確保が難しくなったり、宿泊客がホテルに求めるレベルが高くなっていることが要因だ。

加えて、大きな理由に人員確保の難しさがある。「この立地で人を確保できるか」を考えたときに躊躇する物件には、浪漫を感じても投資できないのだ。

「努力に努力を重ねて人を集めないといけないか、少しがんばれば集められるのか。このふたつには、かなり差があります。人が集められないならやめたほうがいい」と安野社長は苦い表情を浮かべる。

M&Aでは、従業員ごと引き継ぐケースとそうでないケースがある。従業員が残っているケースではさまざまな軋轢の可能性も生じるものの、この人材確保の苦労と比べれば、歓迎材料になるそうだ。安野社長は、プライベートでとある離島のホテルに泊まった際のエピソードを教えてくれた。

「そのホテルでは、従業員が今にも都心に帰りたくて泣きそうな顔で働いていたのです。あまりに気の毒で、そんなロケーションではホテルをやらないと誓いました。

同じ離島といっても、弊社がマリオットホテルに運営を委託する『ザ・ウェスティン・モルディブ・ミリアンドゥーリゾート』では、世界20カ国の人が働いていることで、ロケーションとは異なる楽しさが生まれています。どんな理由であれ、従業員が笑顔で働けるかが一番大事です」。

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