ホンダ「CR-V e:FCEV」先進さより際立つ普通さ 水素を使った燃料電池車を感じさせない作り
東洋経済オンライン / 2024年11月29日 8時20分
そして、これらが実現すれば、809万4900円(CR-V e:FCEV価格)-400万円(補助金合計額)=409万4900円となり、400万円ちょっとで買える計算になる。
補助金次第ではZR-Vと差はない
ちなみに、ホンダのSUVでは、CR-V e:FCEVの次に高い「ZR-V」の税込み価格帯は320万8700円~450万6700円。例えば、中級グレード「Z」のガソリン車4WDが402万8200円だから、同様の価格帯でCR-V e:FCEVを購入できることになる。
ただし、補助金の場合、予算がなくなれば終了してしまうので、いつでも利用できる訳ではない。また、CR-V e:FCEVは、個人・法人を問わずリース販売のみなので、買い切りはできない。例えば、5年後など、リース契約が終了すると車両を返却しなければならないため、長く乗り続けたいユーザーには不向きだといえる。
そして、一番の問題は、水素を補充する水素ステーションの数だ。次世代自動車振興センターの調べによると、2024年9月11日現在、国内に設置されている水素ステーションは、全国で157カ所。水素ステーションは整備が始まったばかりで、その数はまだ限られており、FCEVを普及させるには、まだまだインフラの拡充が必要だ。
CR-V e:FCEVをはじめ、トヨタの「ミライ」「クラウン(セダン)」など、乗用タイプのFCEVはまだまだ小数派だ。だが、航続距離が長く、水素の充填時間は約3分とガソリン車の給油時間並み、しかも環境に優しいと、メリットはかなり多い。
とくにBEVでは、急速充電でも満充電に30分近く必要なことを考慮すると、水素充填が約3分と短いなど、FCEVには魅力的な面も多いといえる。しかも、今回試乗したCR-V e:FCEVの場合は、従来のクルマから違和感なく乗り換えできるし、快適性も高い。価格や水素ステーションの数などの課題がクリアすれば、より多くのユーザーが選択肢のひとつに入れるだろう。
水素自動車の今後
なお、水素を使った次世代車には、ほかにも、トヨタなどがレースなどで開発中の水素エンジン車もある。こちらは、従来の内燃機関を基本的に残したまま、ガソリンの代わりに水素を燃料とする車両なので、モーターで走るFCEVとは異なる。だが、エンジン車の感覚が好きなユーザーにはかなり注目なのではないだろうか。筆者もそのひとりで、水素の低価格化とインフラの拡大次第では、FCEVと同じく大きな期待を寄せている。
いずれにしろ、カーボンニュートラル実現に向けて、次世代車両の開発や普及は待ったなしの状態だ。そんな中、今後、CR-V e:FCEVが市場にどういった反応を受けるのかが興味深い。
平塚 直樹:ライター&エディター
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