住宅ローンに影響…日銀はどこまで金利上げるか どうして日銀は金利を上げるかわかりやすく解説
東洋経済オンライン / 2024年12月4日 9時20分
私たちの生活では物価上昇は、嬉しいとも思えない部分も少なくありません。では、どうして日銀は2%の緩やかなインフレを目標とするのでしょうか。
これは、緩やかなインフレは景気にとってプラスに働くからです。例えば、マンションを購入しようと考えたとき、デフレ下で将来、マンション価格が値下がりする見込みならどうでしょう。人々のマンションの買い控えにつながります。逆にマンションの値上がりが期待される環境なら、マンション購入の意欲を持つ人が増えます。
マンション需要が増えれば、住宅業界が潤って景気に対してプラスに働きます。ですので日銀は景気を良くするために、デフレは防ぎたいと考えるのです。
日銀の物価目標はなぜ2%なのか
さらに、日銀の物価目標がなぜ2%と決めているか、については欧米各国の物価目標が2%であるため、それに合わせているということが最も大きい理由とされています。さらに、なぜ、欧米各国の物価目標が2%なのか、の理由は、さまざまありますが、1%の低い目標だと、物価上昇がマイナスのデフレに落ち込むリスクもあるため、過去の傾向から推計して2%とするのが妥当だろうとされています。
これまでの解説を整理して“日銀はどこまで利上げするのか”について考えてみましょう。
中立金利は①自然利子率+②物価上昇率です。自然利子率(潜在成長率)は-1%から+0.5%と推計されています。これに物価上昇率の2%を合せると、1%から2.5%が中立金利と見られます。
したがって、利上げは、このあたりの水準まで行われるというのが理論上で整合します。しかし実感として考えると、潜在成長率はゼロ%程度、足元の円安なども落ち着いてくると物価上昇率は1%程度になってくると見られます。そうなれば、実感としての中立金利から、利上げの終着点は1%程度になります。
日銀は10月に出した「経済・物価情勢の展望」のなかで、「わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」と見ています。
日銀は「賃金の上昇を伴う形で」の2%の「物価安定の目標」が金融政策のベースとしています。11月28日に労働団体の連合が、来年の春闘での賃上げについて、大手を含む全体では定期昇給分を含めて5%以上、中小企業の労働組合では大手との格差是正を図るため6%以上を求める方針を正式に決めました。このような賃金の上昇が期待される2%の物価上昇が実現しています。
来年は0.25%の利上げが2回程度行われる?
景気が緩やかに回復するなか、賃金上昇を伴う物価の上昇が実現しており健全な経済環境になっていると判断されると見られて、12月19日の日銀金融政策決定会合では0.25%の利上げの可能性が高いと見ています。また、来年は0.25%の利上げが2回程度行われるでしょう。
1つ、留意点ですが、「利上げは景気にブレーキを踏んでいく政策」とお伝えしました。ここで「ブレーキを踏んでいく」ということは、急激に「ブレーキを踏む」ことではありません。
中立金利よりも政策金利が低いうちは金融緩和的な政策となります。ですから12月に利上げが実施されても、引き続き緩和的な政策で景気に対してプラスの刺激を与えている状況に変わりはありません。
吉野 貴晶:ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長
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