「インバウン丼」食べない人にも批判された深い訳 テーマパーク化するニッポンに、どう向き合うか
東洋経済オンライン / 2024年12月12日 8時40分
デフレが終わり、あらゆる物が高くなっていく東京。企業は訪日客に目を向け、金のない日本人は"静かに排除"されつつある。この狂った街を、我々はどう生き抜けばいいのか?
新著『ニセコ化するニッポン』が話題を集める、"今一番、東京に詳しい"気鋭の都市ジャーナリストによる短期集中連載。
さまざまな商業施設や観光地が誕生した2024年。中でも話題になった施設の一つが、豊洲に誕生した「千客万来」だろう。豊洲市場に隣接した場所に誕生し、飲食店に温泉・ホテルが付いた複合型商業施設である。
【画像10枚】海鮮丼「極」で7800円、竹でも3900円…物議醸した「インバウン丼」
ここが話題を呼ぶきっかけになったのが、「インバウン丼」という言葉。同施設で売られている高額な海鮮丼のことで、「インバウンド観光客向けのぼったくり商品」というイメージから、その名称が批判的に広がった。
興味深いのは、そこでの批判を見ていると、それは単なる「ぼったくり」に対する批判だけにとどまっていないことだ。もっと別の理由の恐怖がそこにある。それが「都市のテーマパーク化への恐怖」だ。どういうことか。
千客万来の「インバウン丼」とはどのようなものか
「豊洲 千客万来」は大手・温泉施設グループとして知られる「万葉倶楽部」が施設管理者で、飲食街である「豊洲場外 江戸前市場」と、温泉施設「東京豊洲 万葉倶楽部」から成り立っている。
【画像10枚】海鮮丼「極」で7800円、竹でも3900円…物議醸した「インバウン丼」はこんな感じ
もともとこの施設は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目指して2018年度に開業予定だったが、指定管理者の変更や豊洲市場移転の延期、コロナ禍などを経て、計画よりも5年ほど遅れた開業となった。
「日本の文化を発信」するスポットに
ただ、事業者の提案には「食を起点に日本の文化を発信」するという理念が書かれてあり、訪問客の重要ターゲットとして訪日観光客が押し出されているのは変わりない。
実際、施設は江戸時代の街並みが再現されていて、長屋が連なっている。その中に飲食店が軒を連ね、場内で食べ歩きができるのだ。飲食店の横には大きな「時の鐘」もあり、さながら江戸時代をテーマにしたテーマパークである。
「インバウン丼」が話題になるのも、千客万来のこうした「外国人向けに作られた施設」というイメージがあるのだろう。
では、実際「インバウン丼」とはどんなものか。
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