「インバウン丼」食べない人にも批判された深い訳 テーマパーク化するニッポンに、どう向き合うか
東洋経済オンライン / 2024年12月12日 8時40分
例えば、場内では、1杯1万8000円のウニ丼や、6980円や7800円の海鮮丼が売られている。施設内には、こうしたお店がポツポツと点在していて、確かに初めて見るとインパクトは大きい。
豊洲という場所である程度の量の海鮮を提供しようとすれば、こうした値段になることは仕方ない側面もあるのだろう。ただ、その高額っぷりは大きな話題を呼び、「インバウン丼」は2024年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされた。
この言葉の中には、単に「値段が高い」という意味だけでなく、「インバウンド観光客向けのぼったくり値段で日本人は相手にされていない」という、どこか卑屈なニュアンスも含まれている。
誇張される「インバウンド観光地」
面白いのは、こうした評判がその実態とは少し乖離していることだ。いや、正確には「かなり誇張されて認識されている」というべきか。
私自身、千客万来に何度か訪れ調査をしているが、実際には館内は数多くの飲食店が立ち並んでおり、こうした高めの商品は一部。ちょい飲みからスイーツの食べ歩きまで、値段も種類も、選択肢はけっこう幅広い。
また、ライターで編集者の鬼頭勇大も現地を訪れ、「訪日客向け的な価格設定の商品はあるものの、日本人でも楽しめる、間口の広いエリアといえる」と書いている。
実際、同施設の広報も「(千客万来は)インバウンドなど特定の層に向けて作られた施設ではなく、近隣の居住者、国内旅行者、インバウンドの皆様など、全てがお客さまとなっております」と、ターゲットは絞っていないことを述べている。
しかし、それでも新語・流行語大賞にノミネートされてしまうぐらい、「インバウン丼」は強い共感を持って多くの人に流布している。また、そうしたコメントを見ると、千客万来に訪れたことがない人もしきりにこうした商品に否定的な見解をしているのだ。
このような、半ば「感情的」な声はどのような背景から出てくるのだろうか。
うっすら感じる「日本人排除」と「外国人のためのテーマパーク」
おそらく、その理由は、千客万来が外国人を「選択」し、彼らのために作られたテーマパークのような空間だと、多くの日本人がうっすらと思っているからである。どこか、その場所から「日本人」が排除されているように感じさせているのだ。
こうした意味での「テーマパーク化」は、日本の至る所で起こっている。例えば顕著なのが、北海道のスキーリゾートとして知られる「ニセコ」だ。
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