「インバウン丼」食べない人にも批判された深い訳 テーマパーク化するニッポンに、どう向き合うか
東洋経済オンライン / 2024年12月12日 8時40分
確かに筆者もここを歩いたとき、数万円はくだらないカニや、ウニの盛り合わせに驚いたことがある。だから、それは事実ではあるのだが、そうした外国人向けの高額商品を提供する商店は、商店街の一部に過ぎない、というのもまた事実だ。
ただ、報道などの影響もあって周辺の地元民や、そこに関係のない日本人から黒門市場はすっかりネガティブな印象がついている。一部では「大阪の恥」という根も葉もない称号さえ与えられるほどだ。
地元民にとって、直接「買い物しづらい」という被害も出ているのかもしれないが、ほとんどの人は、こうした黒門市場周辺の事情とは無関係である。にもかかわらず、その評判がこうも広く、そして熱く語られるのは、やはりそこで起こっている「日本人排除」(のように見えるもの)に対する感情的な反発があるからだろう。
「外国人のためのテーマパーク化」は、日本のさまざまなところで発生していて、それに違和感を持つ人々の声がそこにある。
「テーマパーク化する日本」をどう生き延びるのか
私が「ニセコ化」と呼ぶ、こうした都市の「テーマパーク化」は今後ますます日本で広がっていくだろう。
私はこうした傾向について、肯定的な立場でも、否定的な立場でもない。ただ、そこに「分断」がある。そのことを感じ、書いている。
けれども、近年のこの「排除(されていると思う)」感覚については、特に事業者側はよくよく考える必要がある。千客万来の例でもわかるように、結局はその「見え方」によって、実態がどうであろうと関係なく、「インバウン丼」のような評判は立つからである。
インバウンド需要を取り込むにしても(というかそうしないと多くの施設は生き残れないだろう)、それが「日本人排除」しているように見えないための工夫や、あるいはニセコのように完全に「インバウンドに振り切る」というのも、一つの方法だろう。
あるいは、メディアの中心地である東京から離れた場所でインバウンド向けの商売をする、といった発想もできるかもしれない。
一方で千客万来は、なまじ「さまざまな人を受け入れる」ことを明言しているために施設全体のターゲットが曖昧になり、結果あまりパッとしない印象になっていることも否めない。
日本人から悪評が立っても、それをはねのけるぐらい外国人に受け入れられる施設を作ることも、一つの手なのだ。
いずれにしても、観光が主要な産業の一つになりつつある日本において、ニセコをはじめとする「テーマパーク化」の現実を見つめ、それをどう生き抜いていくのかは、企業にとっても喫緊の課題になっているのである。
谷頭 和希:都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家
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