コタツ記事が蔓延するWebメディアに対する苦言 ノンフィクション作家が説く現代の「書き手」論
東洋経済オンライン / 2024年12月19日 9時30分
SNSからの切り抜き記事が氾濫する今の時代。しかし、このような状況だからこそ「書き手独自の視点や考えが大事」と語るのがノンフィクション作家の石井光太氏。
海外のスラムや東日本大震災、教育現場と、あらゆる現場において独自の視点で精密な取材を続けてきた石井氏が、今回初めて自身の取材・執筆・企画の方法論を明かした新著『本を書く技術』を上梓。
生成AIが文章を作れるようになりつつある今の時代、書き手はどう行動していくべきか、石井氏に聞く(全2回の1回目)。
コタツ記事が蔓延するメディア
―今のメディアはコタツ記事や切り抜き記事が蔓延していますが、このような風潮はどうして起こっているのでしょうか? 石井さんの見解をお聞かせいただけますか。
一番はビジネスモデルですよね。特にWebメディアはPVに対しての広告費で稼ぐモデルなので、1日何十本とたくさん記事を出さなくてはいけません。そのような状況では、記事1つひとつに対して精度を高めること自体が難しいですし、予算もあまりかけられないので校閲すら入れていないところもある。
書き手も少ない原稿料で稼ぐために大量生産していかなきゃいけないですし、きちんと取材した記事よりもいわゆるコタツ記事みたいなもののほうが読まれるし儲かるわけですからそっちに流れていく。そのような環境では書き手は当然、育たないし、成長しようとも思わない。
そして読む側としても、ファクトチェックも含めた文章の正確性をまったく気にしないわけではないけれど、重要視していないんですね。それよりも、いろんな情報が流れていく中から自分の興味のあるものを見つけて、それに対して何かを言ったり思ったりするという1つの材料でしかなくなってしまっています。だからメディア側だけでなく読者側の問題でもあります。
Web記事自体の閲覧数もすごく減っていますし、メディア同士で広告のパイの取り合いになっているので、こうしてメディアが発信するテキスト全体の質というのが本当に下がってきているのが現状なのかなと思います。おそらく今後もっとひどくなっていくのではないでしょうか。
生成AIの時代、書き手に求められるのは?
―今のような状況で、書き手はどう行動していくことが大事だと考えていますか。
本来、書き手はこのようなビジネスモデルの歯車の1つであってはならないわけです。なぜその人は書くのかという意味が本来はあったはずなんです。事実を見極めて、それを単純に情報ではなく自分なりの考えや視点をのせて文章で表現する。
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