コタツ記事が蔓延するWebメディアに対する苦言 ノンフィクション作家が説く現代の「書き手」論
東洋経済オンライン / 2024年12月19日 9時30分
雑誌のルポみたいなものは元々そうだったわけです。ただ、お話ししたように今のメディアではそういったことを求められないので、情報を流すだけになってしまっているわけです。
しかしそれはAIに取って代わられてしまう仕事ですよね。例えば、ワイドショーで誰がどういう発言をしたか、SNSでどの話題が盛り上がっているか、こうした記事は数年後にはAIが誤字脱字のない状態でしっかり作れるわけですよ。人間がやる必然性がなくなってきますよね。工場労働がロボットに取って代わられているのと同じことが、文章でも起こっています。
書き手がもし文章で生計を立てていきたい、あるいは商品として価値があるものを作りたいと考えるのであれば、その人でしか発見できない唯一無二の事実を見つける能力とか、その人にしか持っていない視点とか、その人ならではの文章表現を磨いていかなくてはいけません。
これが流れ作業としての記事みたいなものや、AIに対して勝てるかどうかの分かれ目です。というか、そこでしか多分勝負のしどころってないんですよね。
最低3000冊は読んでアンテナを育てる
―そのような書き手独自の視点や考察力を持つには、日頃からの取材や観察、インプットがないと難しいと思いました。石井さんは何か意識されて取り組まれてきましたか?
書く以前に読むことでしょうね。僕は中学生ぐらいのときから作家になりたいと思い、毎日たくさん本を読んでいました。ノンフィクションや小説、学術書など、ジャンルを問わず古今東西のあらゆるものをです。
そうすることで初めて、何が面白いのか、どこに心を奪われるのか、何が読者をのめり込ませるのか、そういったアンテナが育っていくわけです。
読んでいるものが非常に限られていたり、偏っていたりすると、自分で何かを書くときに広い視野を持てません。例えば、経済について面白く書くなら、経済だけでなく違う分野も知らないと読者を惹きつける文章にはなりません。だから興味あるジャンルだけでなく、幅広く読むことが大事になるのです。
人を惹きつける文章を書きたかったら、最低でも3000冊は読まないと面白さへの理解は深まらないですし、今作家として知られている人たちで本を読んでいない人はいないのではないでしょうか。特にノンフィクションの場合は題材となるものが無限大にあるわけなので、そこから面白いものを抽出するのはアンテナがないと難しいと思います。
だからまずは読む、そして書くのがすごく大きな要素です。そうやってアンテナを育てて面白さがわかるようになったら、今度はそれをどう文章で表現できるかが重要になってきます。そこは実際に書いていくしかありません。
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