「ナベツネと正力松太郎」野球に与えた影響の差 プロ野球全体の繁栄をどう考えていたのか
東洋経済オンライン / 2024年12月22日 8時40分
日本のプロ野球は正力松太郎という一個人の「ビジネス的野望」によって創設され、現在の隆盛を見るに至ったと言える。そしてそのビジネスモデルを引き継いだのは、正力に見いだされた渡邉恒雄という経営者だった。
「プロ野球の父」と言われた正力松太郎は、1885年、富山県に生まれる。若いころは柔道選手だったが、東京帝大に進み卒業後は警視庁に入庁。警察官僚として出世街道にのるが、1923年10月、摂政宮(のちの昭和天皇)の暗殺未遂事件(虎ノ門事件)が起こり、警備の責任者だった正力は翌年1月に懲戒解雇された。しかしその直後に読売新聞を買収し、新聞経営者となった。
読売巨人軍が誕生した経緯
当時、読売新聞は、朝日新聞、毎日新聞(東京日日新聞)という大新聞の後塵を拝する東京地区の一地方新聞だった。大正期から朝日新聞、毎日新聞は「中等学校野球大会」を夏と春の甲子園で開催し、全国的な人気を博し、新聞の拡販にもつなげていた。
読売新聞もこれにならい「野球」を拡販に利用すべく、MLB(当時の呼称は大リーグ)のスター選手による選抜チームを日本に招聘し、大学野球などの強豪選手と対戦させた。これは非常な人気を呼んだが「野球熱」の過熱に危機感を抱いた文部省は1932年、「野球ノ統制並施行ニ関スル件(野球統制令)」を発令、学生、生徒が金をとって野球を見せる試合興行に出場することを禁じた。
第2回の日米野球を企画していた読売新聞、正力は困惑したが、それを逆手にとって沢村栄治など有望選手を大学、中等学校などを中退させるなどして、プロ野球チームの「大日本東京野球倶楽部」を結成。1934年、ベーブ・ルースなどのMLBオールスターチームと対戦させ、大反響を呼んだ。
この「大日本東京野球倶楽部」が、のちに読売巨人軍となった。NPBが2024年を「プロ野球90年」と称しているのは、この1934年を「プロ野球元年」としているからだ。
正力松太郎はその後、東京、名古屋、大阪の有力企業に声にかけ職業野球(プロ野球)チームの結成を働きかけた。そして1936年からリーグ戦、公式戦が始まった。
太平洋戦争が始まったために、プロ野球はそれほど発展しなかったが、戦後、アメリカを中心とする占領軍がやってきて「野球」を日本復興に役立てるために奨励すると、プロ野球人気は高まった。
正力は、自社の新聞販売に役立てるために巨人軍を設立し、プロ野球のリーグ戦も始めたが、リーグ戦を維持するためには「公平、公正」である必要があることもよく知っていた。1949年、南海ホークス(今の福岡ソフトバンクホークス)が、明治大学の好投手、江藤晴康を他球団と争奪戦を繰り広げて強引に獲得したときは、南海軍の経営者を呼んで叱責している。
2リーグ12球団体制の「正力構想」
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