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「ナベツネと正力松太郎」野球に与えた影響の差 プロ野球全体の繁栄をどう考えていたのか

東洋経済オンライン / 2024年12月22日 8時40分

渡邉はこの年、明治大学の好投手、一場靖弘をめぐる「栄養費」問題にかかわってオーナー職を引責辞任したが、読売グループ、巨人への影響力は衰えなかった。2011年には「清武の乱」で世間を騒がせるなど、相変わらずプロ野球界の頂点に君臨した。

渡邉と親しかったスポーツジャーナリストの江尻良文の著書「渡邉恒雄とプロ野球」(双葉社)には、「江川事件」が勃発した際に、渡邉は江川卓の巨人入り、小林繁の阪神移籍へ向けて奔走したと書かれている。当時まだ局長クラスだった渡邉がこの大事件にどこまで関与したかは疑問が残るが、「球界のフィクサー」として大きな影響力を行使したことをことさら強調したかったのではないか。

正力松太郎、渡邉恒雄、ふたりの「巨魁」を比較するとき、思い至るのは、正力が読売グループの勢力伸長を目指しつつも、つねに「社会、業界全体の繁栄」を意識していたのに対して、渡邉はひたすら「読売、巨人の覇権」のために働いたのではないか、ということだ。

1959年、「野球殿堂表彰」が始まると、正力松太郎はその第1号として殿堂入りした。プロ野球の経営者としては、大映スターズなどの永田雅一、日本ハムファイターズの大社義規が殿堂入りしているが、渡邉恒雄もそのリストに名前が載るのだろうか?

文中敬称略。

球界再編時の新聞各紙、および『球界再編は終わらない』(日本経済新聞社)などを参照した。

広尾 晃:ライター

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