絶滅危惧船「ホーバークラフト」大分で復活の理由 定期運航は世界で1カ所のみの"爆音"珍乗り物
東洋経済オンライン / 2024年12月29日 8時0分
フェリーよりはるかに速く海上を疾走、さらに陸地まで走れる「ホーバークラフト」という船をご存知だろうか?
【写真10枚】絶滅が危惧されている船「ホーバークラフト」はこんな感じ。海の上を「飛ぶ」乗り物だ
一般的な船と違い、ホーバークラフトは海面上を飛ぶように進むため、仕組みとしては飛行機にも近い。世界でも他に1カ所しか就航していないという、旅客船としてのホーバークラフト定期航路が、来年にも大分県でスタートする。
最高時速80Kmで「飛ぶ」
ホーバークラフトが「飛ぶ」秘密は、船体の下をぐるりと取り巻く「スカート」部分にある。
船の下部にあるファンから真下に空気を送ると、「バババッ!」という独特の音とともに、ゴム状のスカートが空気で膨らんでエアクッション状に変化、圧縮した空気を下方向に噴射して浮上。船体最後部のプロペラを回して推進力を得れば、最高時速80kmで海面の数十cm上を飛ぶように前進できる。
一方で、フェリーなど普通の船は、浮力で海水に浮かんで水面下のプロペラを回して進む。
水の抵抗を受けるため速度は約20ノット(時速40km弱)程度だ。おなじ船でも、海面に「浮かぶ」ではなく「飛ぶ」からこそ、ホーバークラフトはフェリーより圧倒的に速い。
しかも条件によっては、同様の速度で陸地も走れる。フェリーなら桟橋で降りてターミナルビルまで歩くような場所でも、ホーバークラフトならバスのように小回りを利かせて、上陸したうえで玄関近くまで運んでくれるのだ。
いわばホーバークラフトは「船・飛行機・バスの良いとこどり」な存在といえるだろう。
なお、2024年12月現在、大分県以外でホーバークラフトが定期就航しているのはイギリス・ポーツマスとワイト島間のみ。なぜ2カ所目が大分県なのか。その事情を探ってみよう。
不便すぎる大分空港
大分県にホーバークラフトが就航した目的、それは「空港への所要時間短縮」だ。
大分空港はもともと市街地の近く(現在の大洲総合運動公園)にあったものの、移転候補地での反対運動もあり、県都・大分市から60km以上も離れた場所への移転を余儀なくされた。
空港への連絡バスは到着まで1時間以上もかかるうえに、九州横断道・大分空港道のインターチェンジに到着するまでの渋滞で、場合によっては「予定していた飛行機に乗れない」ような事態も、しばしば起きるという。
しかし、大分市と大分空港の間にある別府湾を横切れば、直線距離にして30km程度での移動が可能。また、大分空港は海上の埋立地にあり、ターミナルビルまでの船の発着が容易にできる。
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