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絶滅危惧船「ホーバークラフト」大分で復活の理由 定期運航は世界で1カ所のみの"爆音"珍乗り物

東洋経済オンライン / 2024年12月29日 8時0分

さらに、巨大なファンやプロペラ、エンジンの動作で金属音のような爆音があり、各地ともしばしば騒音問題に発展していたという(余談だが、筆者はホーバークラフトが就航していた香川県高松市の出身で、「港から1km先の学校の4階室内でも普通に聞こえる爆音」や、近隣の学校から「授業が止まる!」と苦情が出ていたような状況を、身をもって体験している)。

加えて乗り心地はお世辞にも良くはなく、「カッコいいから一度は乗りたい!」という人々を、リピーターとして定着させることができなかった。

ただ、大分では「空港アクセスで陸上より圧倒的に速い」という決定的な強みがあり、国内のホーバークラフトとしては最後まで生き残った。しかし、「大分空港道路」の全線開通によるバスの所要時間短縮で乗客は急減。中東の政情不安から来る原油高が重なり、3年連続の赤字で財務が急激に悪化する。

追い打ちをかけるように、船を建造した三井造船(現:三井E&S)がホーバークラフト撤退を表明、今後のメンテナンスが困難となった。運航会社の「大分ホーバーフェリー」は万策が尽き、2009年9月に経営破綻。ホーバークラフトは翌月に運航終了に追い込まれた。

世界中から消えたホーバークラフト

世界的に見ても、ドーバー海峡・香港・エーレ海峡のホーバークラフト航路が、架橋や海底トンネルの完成による航路縮小で姿を消している。日本だと、瀬戸大橋の架橋で運航終了に追いやられた宇高航路が同様の事例だろう。

一方で、イギリス・ポーツマス~ワイト島間は架橋がなく、極端な遠浅(水深が浅い砂浜)が続く地形の関係上、水面に接しないホーバークラフトのほうが内陸近くに到達できる。世界で1カ所だけ「ホーバークラフト運航」を継続できたのは、奇跡的に「ホーバー向け」だった地理条件のおかげと言えるだろう。

ただし軍用や災害救助用途のホーバークラフトは、「エアクッション型揚陸艇(LCAC)」として、アメリカなど世界各地で現役だ。日本でも、2024年1月1日に発生した能登半島沖地震で道路が寸断された奥能登の砂浜に上陸、復旧用の重機を送り込むなどの活躍を見せている。

津波が発生すると海中には流木などが漂い、プロペラで進む船だと浮遊物を巻き込んでしまう。海面から浮いて砂浜に上陸できるホーバークラフトは、災害が多発する日本では今後とも必要とされるだろう。

現状では、ホーバークラフトの立ち位置は「旅客船としては難あり、災害救助には出番あり」といったところだろうか。ただ、定期就航の準備が進む大分のホーバークラフトは、こういった問題がある程度は解決されているようだ。

後編『16年ぶり航路復活「ホーバークラフト」進化の実態』では、新しいホーバークラフトがどう進化したか、また残された課題について検証する。

宮武 和多哉:ライター

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