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真面目な親が陥る"闇バイト"の温床になる子育て 親は子供にとって「指示役」になってはいないか?

東洋経済オンライン / 2024年12月30日 9時20分

「そっか。厳しいんだね」

マナは否定することなく、話を聞いてくれた。それ以来、トモヤは毎日のようにマナとメールでやりとりをした。マナに恋心を抱いていたトモヤは、それが幸せなひとときだった。

ところがある日突然、父親から「マナと付き合うのはやめなさい」と言われた。

「えっ……?」

母親の行き過ぎた監視

絶句していると、「そんなことをしている暇があったら勉強しろ。ここのところ成績がよくないじゃないか。わかったな?」

そうたたみかけるように言って、去っていった。

なぜ父親はマナのことを知っている? トモヤは親に好きな女の子の話なんてしたためしがない。学校でも、マナとの交際を知っている人はほとんどいない。まさか、携帯を盗み見ているのか。

トモヤは怒りに震えた。そして両親のいる部屋に行き、わめいた。

「勝手にオレの携帯見てるんだろ! 親だからって、そんなことしていいのかよ!」

母親は、トモヤの携帯をチェックしていることを認めた。いかがわしいサイト、危険なサイトにアクセスしていないか監視するのに飽き足らず、どんな友だちとどんな会話をしているのかを確認していたと。

父親は一笑に付した。

「トモヤのためを思ってやっていることだ。親として当然の権利じゃないか」

トモヤは絶望した。この人たちには何を言ってもムダだ。マナとの関係もぎこちなくなり、自然消滅してしまった。

トモヤは表向きは父親に逆らわないようにしながら、家を出ることを目標にした。東京の大学に進学すれば自由になれる。勉強なんてどうでもいいし、とくにやりたいこともなかった。どうせなら、いままで禁止されていたことをやろう。そうしてひとりで生活する中でパチンコにハマったのだった。

あるとき、パチンコ店で出会った同年代の男、タケルに声をかけられた。

「簡単だけど稼げるバイトがある」

タケルもトモヤと同じようにパチンコにお金をつぎ込んでおり、経済的に困窮していた。その高額バイトによって助けられたという。インターネットを通じて指示を受け、その通りに動くだけでなんと1回10万円ももらえるらしい。それも、指定の住所に住む人から紙袋を受け取って、それをコインロッカーに入れるだけという簡単なものだ。

タケルは闇サイトを見せながら、ヘヘヘと笑った。これは……、やばいやつなんじゃないのか。トモヤは犯罪の匂いを感じた。しかし、何も知らない、何も気づいていないことにした。何かあったら、「そんな説明は受けていない」「自分は何も知らなかった」と言えばいい。そう思えば躊躇はなかった。こんなおいしい話に乗らないわけにはいかないだろう。何度も犯行を繰り返した。

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