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「ゴミ屋敷になった実家に帰省」片付け決意の顛末 「生前整理」をするか否か、それぞれの選択を追った

東洋経済オンライン / 2024年12月30日 11時0分

揉めてしまう親子でよくあるのが、「片付けられない親を持ってしまった」と子どもが被害者意識を持っているパターンだ。説得をする側の考えや感性は、ここまできたらどうでもいいのだ。いかに時間をかけて当事者に寄り添ってあげるか、その点に尽きる。

残り短い人生を好きに生きてほしかった

しかし、あえて「生前整理をしない」選択をとったケースもある。

現場は関西にある集合住宅の一室。かつては家族4人(父、母、長女、長男)で暮らしていたが、姉弟はそれぞれ独立し実家を出た。その後、父は亡くなり、母がひとりで住むことになった。

母の趣味は歌だったという。コンサートにも出演し、衣装を大量に買い込んでいた。小物や雑貨も多く、3LDKと広い間取りだが、部屋はモノで埋まり、生活は主にキッチンで送っていたそうだ。

高齢者の1人暮らしにしては広すぎる家だ。3つある部屋はモノが詰め込まれているだけで生活の場としては機能していない。ただ、母は長年住んできたこの家に愛着を持っていたようで、安くない家賃を払っていても、小さい家に引っ越すことは考えられなかった。そして、荷物が減ることはなく、どんどんと増えていってしまった。

今回の依頼主である長男も、はじめのうちは「少しは片付けたほうがいいんじゃないか」と実家に帰るたびに母を説得していたという。

「ちょっとずつ私が片付けてもいたんですけど、それが母のストレスになっていたみたいです。“捨てたらええやん”って言うのは簡単ですけど、本人からしたらそれがプレッシャーになっていたようで。歳をとって動きにくくなってきていたし、膝に水が溜まったりもしていて、ストレスで別の病気になるよりも好きなように暮らしてもらったほうがいいんじゃないかと考えるようになったんです」(長男)

それからは実家に帰るたびに増えていく荷物には触れることなく、楽しく会話だけをして帰るようにした。長男が昔使っていた子ども部屋にも入ることができない状況になっていたというが、母のことを第一に考えると、そうするのが自然な選択だった。

「母にはストレスを与えないような形で、過ごしてもらえたかなとは思っています。僕よりも先に逝ってしまうのだから、その短い人生を、もう好きに生きてほしかった。それは多少なりともできたのかな」(長男)

二見氏も、「息子さんの選択は決して間違っていないと思います。すごく大切なこと。人に迷惑をかけていなければ、好きに生きればいいんじゃないかな」と話す。生前整理は「子のために親がしておく“べき”こと」とされているが、何事においても絶対はないのだ。

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