楽天が手を伸ばす「お試し割」というパンドラの箱 通信業界は嵐の前の静けさ、市場が荒れる懸念も
東洋経済オンライン / 2025年1月1日 9時30分
業界全体を巻き込む渦を起こしかねない「パンドラの箱」は、いつ開かれるのか――。
【図表で見る】携帯電話契約数における事業者別シェア。楽天は躍進したとはいえ、大手3社との差は依然大きい
携帯キャリアが、通信回線の新規契約者に期間限定で料金を値引きする「お試し割引」制度が2024年12月26日、解禁された。端末販売とセットではない新規通信契約を対象に、最長6カ月、上限2万2000円(税込)の値引きが可能になる。ユーザーは1事業者につき1回のみ割引を受けられる。
従来こうしたお試し割引は、利用者の囲い込みにつながるとして総務省が禁じていた。キャリア事業に後発で参入した楽天モバイルが「新規顧客獲得に向けた乗り換えのきっかけを提供したい」と見直しを要望し、電気通信事業法の関連ガイドラインが改正された。
楽天は「通信サービス半年無料」を例示
解禁後、キャリア4社はまだ具体的な動きを見せていないが、少なくとも制度改正のきっかけを作った楽天は早い段階で、お試し割引導入に踏み切る可能性が高い。
楽天は利用データ量に応じて料金が変動する単一のプランを提供しており、最も高いデータ無制限の料金は月額3278円(税込)だ。半年無料にしても、ちょうど条件に収まる計算になる。
実際に楽天は過去の総務省有識者会議で、「6カ月間の通信サービス無償体験または全額ポイントバック」といった施策を例示しており、「新規契約者は半年無料」などのうたい文句で導入することが想定される。新規獲得を急速に進める楽天にとって、NTTドコモなど競合キャリアからの乗り換えを促す新たな「武器」になりうる。
楽天モバイルの契約数は2023年以降、右肩上がりを続け、とくに2024年は大躍進を遂げた。
2023年末時点での全契約回線数は652万件だったが、2024年11月10日時点のデータでは、812万件まで急拡大している。楽天市場の出店事業者などを対象に訴求を図ってきた法人向けが牽引しているとみられるが、個人向けも年齢層に応じたポイント還元プログラムなどが奏功して好調だ。ただ、国内の個人向け市場は飽和しつつあることから、このペースを維持したままでの契約拡大は険しい道のりでもある。
総務省の調査では、消費者が通信事業者の乗り換えを検討するに当たり、「通信品質に不安がある」といったサービス面の懸念が乗り換えをためらう要因になっている。2020年にキャリア事業に本格参入した楽天は、「安いが、つながりにくい」といったイメージを持たれがちだった。
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