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米国オーディオメーカーが狙う日本市場の"鉱脈" 配信時代、ストリーミング対応で市場拡大

東洋経済オンライン / 2025年1月2日 7時50分

「ニーズを的確につかみ、その上でグローバルで築いたブランド価値と掛け合わせる」ことこそがSonosの戦略的アドバンテージだとラローサ氏は強調する。

さらにラローサ氏は音楽配信環境の変化が、日本における事業者向け音楽配信ビジネスも変えられると確信しているようだ。

Sonosは米国などで店舗などの商業空間向けの製品やサービスも展開していたが、これらの日本市場への投入も計画しているという。一昔であればUSENなどが独自に開拓したネットワークで展開していたが、言うまでもなく、それらは既にインターネットサービスへと置き換えられている。現在はコンテンツの豊富さやチャンネル選択だけで、適切な音楽が流れてくることが付加価値になっている。一方で、回線を直接引き込む必要がなくなったことで参入障壁が下がったと言えるだろう。

「ホテルや飲食店、医療施設など、音によって空間の質を高められる領域は幅広くあります。我々は”Sonos Era 100 Pro”などのプロ向けソリューションを持っていますが、これらを店舗向けのスピーカー管理サービスと共に、2025年春には日本市場に導入します。音楽体験そのものをブランド価値として、商業施設にも展開することでSonosブランドの価値を高めていきます(ラローサ氏)」

こうした商業領域での展開は、単なる機器販売からの脱却を指すオーディオ業界のトレンドとも一致している。

開発と戦略展開の速度に課題も

ラローサ氏の言葉からは、グローバルブランドとして蓄積したテクノロジーとコンセプトを日本特有の市場要求と組み合わせることで、新たな音響体験を定着させようとする意図が感じられる。

ラローサ氏の役割は、ビジョンをセールスやマーケティング、チャネル戦略へ落とし込み、顧客との接点を生み出すことにある。現場重視でフットワーク軽く動き、オーディオ文化や流通特性を理解した上で実行する彼女の手腕は、日本での展開に役立つかもしれない。

Sonosが日本で本格的なブランド認知を確立していく過程は、オーディオ業界全体が直面する課題と重なり合う。コンテンツ過多の中で、どのように豊かな体験価値を生むのか。技術革新と文化的背景をいかに調和させるのか。

一方で音楽ストリーミング配信と共に成長してきたSonosだが、音楽産業の変革期が終わり安定してきた昨今、競争はより一層激しくなっている。

音楽ストリーミング配信時代の体験を重視するコンセプトは、他のライバルも積極的に採用し、戦略の中心においている。そうした中で木場の小さなSonosが開発と戦略展開の速度に課題を持っている事は確かだろう。

今後、Appleもこのジャンルにおいて大きな進歩を果たす可能性があり、欧州の伝統的なオーディオブランドも追従してくると考えられる。それだけに、ローカルな視点とグローバルな戦略を織り交ぜたSonosのアプローチが、日本市場の開拓でどれほどの成果を挙げるのか。”オーディオ体験のあり方”を再考する一つの手がかりとなるはずだ。

本田 雅一:ITジャーナリスト

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