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インボイス事業者じゃないと損する職種はあるか いまさら聞けないインボイス制度の超基本(下)

東洋経済オンライン / 2025年1月6日 18時0分

仕入れのための買い物は「消費」とみなさない

郷:それって要は……仕入れのための買い物は「消費」とみなさない、ということですか?

小山:そういうことです。請求書やレシートや領収書には「消費税」と書いてあっても、会計的に処理するときは「課税仕入れ」という特別な扱いになるんです。

で、インボイス制度がはじまる前は、郷さんが課税事業者か免税事業者かにかかわらず、出版社は私から預かった30円のうち郷さんに支払った10円を仕入税として控除できたんです。でも、インボイス制度が導入されたことで、仕入れ先からの「適格請求書」がないと控除ができないルールに変わったんですね。

郷:つまり?

小山:郷さんが免税事業者のままだと、出版社は郷さんに10円を支払っているにもかかわらず、私から預かった30円をそのまま納税しないといけません。

実際には、出版社は仕入れ先がほかにもいっぱいあるので、30円をまるまる納税することはありません。でも、少なくとも郷さんに支払う10円を控除に使うことができなくなる。これが「クライアントが損をする」の意味です。

郷:そういうことだったんですか。

制度導入から6年間は経過措置がある

小山:ただし、この話には裏があります。「免税事業者に支払う消費税は控除できません」といきなり言われても事業者が困るので、制度が導入された2023年10月から6年間、経過措置が取られています。

(1)免税事業者に支払った消費税の一部を控除できる
  2023年10月~ 2026年9月まで:税額の80%
  2026年10月~ 2029年9月まで:税額の50%
(2)1万円未満の少額取引の消費税は控除できる(※)
  2029年9月までの特例

※基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5000万円以下の事業者のみ

小山:少額取引はいいとして、ぜひ知っておきたいのは、いま現在(2024年)適用されている80%控除です。

郷:80%?

小山:いま現在、出版社は「適格請求書」がなくても郷さんに支払った消費税10円のうち、80%にあたる8円は控除できているんです。

郷:控除しとるんかい! じゃあ、出版社としてはあまり痛くないと。

小山:そう。だから「仕事を依頼するならインボイス事業者にしよう」みたいな思惑なり圧力が本格的に働きだすとすれば、2026年10月か、2029年10月からなんです。免税事業者に戻るフリーランスが増えている理由が少しご理解いただけたかと思います。

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