ニュージーランド公立小の"自由で刺激的"な日常 移民大国で根付く「ダイバーシティ教育」の実際
東洋経済オンライン / 2025年1月10日 10時0分
子どもたちはこちらの学校を気に入っていて、日本に戻れるか心配なくらいです。先生は1つの教室に2、3人体制で、子どもたちと一緒に活動することもあれば、教室の隅にいて、必要なときだけサポートをすることもあります。
1クラス複数体制
鳥羽:先生たちはあくまでも補助なんですね。それにしても、1クラスに複数の先生が常駐しているのは贅沢です。
平倉:そうですね。子どもたちが通っている小学校は、少人数ということもあって2学年で1クラスになっています。さっき小学校を訪問した際に、鳥羽さんが校長先生に質問されましたよね。「自由に育てている分、リスクも生じると思うけど、自由とリスクのバランスはどうやって取っていますか?」と。それも「1クラス複数体制」につながる話でした。
鳥羽:それは、自由にはリスクが付きものだから、先生が1クラスに複数いることで安全が担保され、そのおかげで自由な空間が実現できている、という意味でしょうか。
平倉:ええ。規律で管理せずに子どもの自由にさせる──と言葉で言うのは簡単ですが、とりわけ低学年では、自由は思いがけない危険と隣り合わせになる。
鳥羽:このときに校長先生が「すべては予算の問題なんだ」と、はっきりおっしゃっていたのが印象的でした。
生きた環境に触れる授業
平倉:先生を複数つけられるのも、実験的な教室空間をつくれるのも、あくまで予算があってのこと。ちょうど、これから学校の教育方針を教育省に伝えて予算を取りに行くところだ、と話されてましたね。
鳥羽:ニュージーランドでは、校長の裁量が大きく認められているんですか。
平倉:そのようです。教育省が設定した目標を、各学校がそれぞれの仕方で解釈してカリキュラムを組む。同じ公立校でも、もっと整然と配置された机に向かって勉強するところもあり、学校ごとに異なる個性があります。それは各学校の伝統であると同時に、地域の特徴も反映している。地域の平均的な経済水準や、エスニシティー(民族)構成によって、学校の特色は変わってきます。私の子どもたちが通っている学校では、生徒の多様性と、カリキュラムの柔軟性・横断性に大きな特色があります。
鳥羽:具体的にはどんな授業が行われているんですか。
平倉:授業については、子どもたちの話を通して断片的に知るだけなのですが──印象的だったものにこんな授業がありました。
低学年の移民生徒向けの英語の授業で、ニュージーランド固有種の鳥についての本を読んでいたとき、先生が教室から中庭に出て、鳴き真似を始めたそうです。すると実際にその鳥が飛んできたんです! 子どもたちはそこで、言葉の勉強から、生き物の観察へと連続的に移行します。本に書かれていた言葉が、生きた世界のなかで命を得る。
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