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「世界が感動」浅野忠信スピーチが心を掴んだ必然 技巧がなくても人の心を動かすことはできる

東洋経済オンライン / 2025年1月10日 13時0分

「どうもありがとうございます、どうもありがとう」

声が大きくなり、力が入ります。

「あの、今、私は撮影中です」

「今晩、東京に戻らなければなりません」

「明日の朝からまた撮影です」

瞬きが増加します。感情や緊張の高まりです。また、身体の内側から何かを引き出すような手ぶりが繰り返し見られます。しかし目につきやすい胸の前ではなく、腰より少し上で行われるさりげない動きです。

技巧としての手ぶりならば、見えやすい位置で行うでしょう。また、一流の俳優ですのでスピーチ自体に緊張するとは考えられません。

手ぶりの機能の一つは、思考を促進させるというもの。例えば、指を使うことで計算が楽になりますし、指差しすることで物の存在を正確に確認することができます。これは、誰かに見せるための手ぶりではありません。

つまり、ここでの発言は、あらかじめ準備されたものではなく、自然に感情が高ぶり、その瞬間の思いを言葉にしようとして、口をついて出てきたものである可能性が高いと言えます。

胸を張らなかったワケ

「しかし、これは私にとって大きな大きなプレゼントです」

「どうもありがとうございます」

片手にしていたトロフィーを両手に携え、再びビッグスマイルを見せます。一方、姿勢はやや猫背です。準備された王道のスピーチならば、胸を張り堂々とするところ。しかし、素ゆえ謙虚さが生じたためか、姿勢を小さくしています。

会場からの拍手、歓声が起き、次第に大きくなります。

「ありがとう、将軍チーム」

「皆さん、ありがとう」

「私はとても幸せです」

「ありがとう」

ビッグスマイルに加え、両腕を上げ、ガッツポーズをします。ガッツポーズは、万国共通の誇りや達成感を示す姿勢です。表情と相まって歓喜の感情が伝わってきます。

会場から大きな拍手、歓声が続く中、降壇します。

浅野忠信さんのスピーチは、言葉だけではなく、表情や態度そのものがメッセージとなり、多くの人々の心を動かしたように思います。技術や準備を超えた自然体の伝え方は、喜びと感謝を真摯に伝える尊さを教えてくれます。

この受賞スピーチは、彼の人柄と想いが発露した瞬間であり、日本が誇る俳優を世界に知らせる重要な機会となったのではないでしょうか。

清水 建二:株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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