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「バーチャル世界」で希望格差を埋める若者たち 「努力が報われない仕事」が早々に見切られる訳

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 12時0分

当時は、「将来、やりたいことを仕事にするために定職に就くことはせず、アルバイトを転々とする若者」というイメージで語られていた。私が2000年頃に調査した非正規雇用者の中にも、そのような意識を持つ若者はある程度存在した。

2種類の「リアルな仕事」

これを仕事と希望という観点からみると、リアルな仕事の世界を2つに分裂させ、1つは「努力が報われて欲しい仕事の世界」、もう1つは「努力が報われない仕事の世界」になる。

声優やロックスター、プロ野球選手になるため、努力をする。しかし、それでは生活できないので、成功するまで生活費を稼ぐためにアルバイトする。夢見るフリーターたちは、前者の「なりたい職業」の夢の世界で、努力が報われて欲しいと希望を持ち練習に励む。後者の現実にお金を稼ぐアルバイトの世界では、努力が報われないものと割り切っている。

また、女性にとってみれば、「専業主婦になる」という意味での婚活(もしくは、待っているだけの人も含めて)も同様であろう。収入の高い人と結婚して、「家事・育児」をしていれば生活が豊かになるという専業主婦という「地位」を目指す。

一方で、現実の仕事はアルバイトや一般職で、昇進や昇給はほとんどない。将来、家事や育児をしてその努力が報われるということを信じて、リアルには努力が報われない仕事を続けるという姿がみられたのである。

これらのケースを反転させれば、現実には努力が報われない仕事で生活をしているが、それを埋め合わせるために、「なりたいもの」の世界で、今、現実にしている努力が実って成功するという将来の夢を見るのである。

現実にしている仕事で努力が報われないと感じ、さらに、努力しても将来就きたいと思う仕事(専業主婦も含む)に就けないと思う人たちの行き場が、バーチャルな世界である。リアルな仕事とは別の所で、努力が報われる場を「疑似仕事」と呼んでおく。

疑似仕事で格差を埋め合わせる

疑似仕事には、様々なものがある。その代表例は「パチンコ」である。もちろん、パチンコは換金ができるということで現実世界と多少つながりはあるが、一部のプロを除けば、基本は、経済的には「消費活動」に位置づけられる。しかし、客観的にみれば消費であるが、彼らにとっては一種の仕事的な意味を持つ。それは、その世界で「努力すれば報われる」と思うことができるからである。

同じことが、様々な形のゲームの世界で見られることである。今の若い人は、パチンコよりもネットゲームの世界にのめり込む人が多いという印象である。50年前であれば、喫茶店のインベーダーゲームやリアルに人と対戦する麻雀だろう。ゲームセンターはそろそろ衰退気味で、今では、個人所有のゲーム機、パソコン、スマホなどに中心が移っている。

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