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「デジタル投資→PBR1倍超」期待する人の深刻盲点 「企業の解散価値>株式価値」をどう改善する?

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時50分

次に「②売上」の増加の打ち手は、大きく既存事業と新規事業に分けて考えることになりますが、「既存事業の売上増」を狙う場合には、新市場への進出や新規顧客の開拓、価格の(上方への)見直しといった打ち手が考えられます。

新規事業でもさまざまな打ち手(投資候補)がありますが、ここでは「M&A」などが有力な候補となります。

「③総資産」については、簡単にいえば「無駄な資産を持たない」ことになりますので、不動産オフバラ、持ち合い株の売却などが主な打ち手となります。

また、運転資本の圧縮という観点では、在庫最適化やキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮なども打ち手として考えられます。

最後に「④純資産」については、先に述べたように、「負債の活用」と「株主還元の強化」が打ち手の候補となってきます。

「ここでもあまりデジタル投資が出てこないじゃないか」と思われるかもしれませんが、そのとおりです。

デジタル投資をするだけで(数値の改善の)効果が出るわけではないのです。

肝となるのは「投資」と「成果」の堅い因果関係

さて、ここで冒頭で紹介した社宅用の不動産投資の話に戻りましょう。

この投資は「①社宅完備→②優秀な人の応募数の増加・優秀な人の採用増加→③1人当たりの生産量の増大や、請求する単価の向上→④売上増」を狙ったものだと思います。

このシナリオが間違っているというわけではありませんが、(投資家などが)気にするのは因果関係の成立の確度というものです。

たとえば、②を実現するために、(①の社宅完備よりも)もっと効く施策、たとえば高給や働き方改善といったものがあるのではないのか、ということなのです。

先ほど運転資本の圧縮として、在庫最適化という打ち手をあげました。

この場合でも「SCMシステムを刷新して安全在庫水準を下げよう」ではなくて、「在庫水準を下げる」という打ち手を定義して、そのなかで必要となるサプライチェーンのあり方を練り、そこで必要ならばSCMシステムなどの構築・導入に投資するという因果関係が必要なわけです。

まとめると、「PBR改善のための打ち手の実現手段」としてデジタル投資が必要になる(こともある)というわけです。

このように、デジタル投資がそのままROE(そしてPBR)を改善することはないので、もし御社がDXを経営マターとしているのならば、やや逆説的ですがデジタルの専門家に相談をもちかけることには注意することが賢明でしょう。

デジタル専門家へ相談する注意点は?

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