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ヤマザキマリ「飢えは多くのことを教える」の真実 実体験で腑に落ちたラテン語の格言が意味すること

東洋経済オンライン / 2025年1月16日 17時0分

ヤマザキ:そうですね、失敗や屈辱は人間が成熟するための必須栄養素ですからね、良い養分をもらったと思ったほうがいい。

ちなみにこの格言は古代ローマを代表する詩人、ウェルギリウスですよね。ローマの政体が変わりゆく激動期の人ですよね。優柔不断にしているとどうなってしまうかわからない、非常に不安定な社会だったからこそ、自分が確信を得たことに向かって突き進んでいかなきゃという信念の強さが必要だったのでしょう。

同じ意味の別の格言もラテン語さんは選んでいますね。

fortes fortuna adiuvat「運は勇敢な者の味方をする」

これはウェルギリウスより前の詩人、テレンティウスです。これもまた、自分のやりたいことを突き進んでいこうとしているラテン語さんにとって、とても大事な言葉なのでしょうね。

石橋を叩きすぎることはあまり良くない

ラテン語:ヤマザキさんに伺いたいのが、17歳で単身、イタリアに渡るというご経験です。これこそ大胆で勇敢な決断だったと思います。確か、人に勧められてのことだったんですよね? すべての道はローマに通ず、と言われたと以前お聞きしました。

ヤマザキ:14歳の時のヨーロッパ一人旅の最中に出会ったイタリア人のおじいさんに言われた言葉ですね。ブリュッセルの中央駅のホームで1人佇む私を目撃し、家出少女だと思ったそうです。事情を説明したら「1カ月も時間があったのにフランスとドイツだけ?? イタリアをなぜ端折った!?」と怒鳴られ、その時突然ラテン語で「Omnes viae Romam ducunt!」と発言したんです。

すべての道はローマに通ず、ですね。びっくりしましたけど、結局私が日本に戻った後、手紙を通じてこの人と母親が意気投合し、私のイタリア留学が勝手に決まってしまったんです。

ラテン語:ただ多くのケースでは、そんな大きな決断は、たとえ勧める人がいたとしても、実際に行動に移すということはあまりないと思うんですね。なぜヤマザキさんは実際に行動に移したのか。決断したのか。

ヤマザキ:4歳の時の一人旅も私の意思ではなく、母に行ってこいと言われて背中を押されました。でも私はもともと、そういう成り行きに争わない性格だったんで、よほど嫌なことじゃない限りは受け入れていました。

その頃の私は、将来は画家になりたいと進路指導で先生に相談したのですが「絵なんて生産性がないようなことを将来の目的にするな」と言われ、かなり意気消沈してしまいました。先生はそう言うけれど、うちの母親は音楽家で表現を生業にしていたので、表現という仕事が経済生産性がないからやらなくていい、という言い分には納得がいきませんでした。

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