アメリカの存在感が高まる「カナダ」の外交の今後 重要な視点は移民「国民の4分の1が外国生まれ」
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 15時0分
「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」。トランプ次期大統領の発言でカナダが揺れている。その余波は9年続いたトルドー首相の辞任につながり、次期政権は今年のG7議長国としても難しい舵取りを迫られる。
そんなカナダだが、日本にとっては自由・民主主義・人権重視を共有する外交パートナーとして近年、存在感を高めてきた。
さらにカナダは「準・超大国」と呼ぶべき潜在力を秘めている。食糧やエネルギー豊かな資源大国、ノーベル賞学者を育んだAIや量子技術の開発国、地球温暖化対策の先進国、そして移民立国など多様な側面を持っているのだ。
留学・移住先として、また『赤毛のアン』などの文化や大自然のイメージでも日本での人気は高いが、案外知られていないカナダの素顔を紹介する(山野内勘二著『カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」』より一部、抜粋・編集してお届けします)。
多岐にわたる外交分野
カナダは、G7メンバーであり、国際社会において指導的立場にある。国連の創設メンバーだ。それゆえに、外交の地平は広い。
ウクライナ危機、中東情勢、あるいは北朝鮮など国際・地域情勢から、エネルギー安全保障、食料安全保障、貧困・途上国支援、人権、LGBTQ、国際保健衛生、環境・地球温暖化問題、ハイテクの問題など、非常に多岐にわたる。
安全保障分野では、カナダはNATO(北大西洋条約機構)創設メンバーであり、ヨーロッパのメンバーとの間で相互に共同防衛、軍事協力、費用負担、情報共有、政策協調の義務を負っている。
さらに、アメリカと共同でNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)を運営している。冷戦下の1958年にソ連の弾道ミサイルの脅威に対抗するために設立されたが、現代の急速に変化する技術と新たな脅威に対処するため、宇宙監視、サイバーセキュリティー強化などの近代化にも取り組んでいる。
経済分野では、USMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)、TPP(環太平洋パートナーシップ)をはじめ各国との重層的な自由貿易協定を結んでいる通商国家である。
さらに、カナダは、北極圏にも広大な領土を有し、北極沿岸国からなる北極評議会(AC:Arctic Council)のメンバーだ。地球温暖化で北極をめぐる状況が急速に変化する中で、安全保障、環境保護、ビジネス、科学技術面での国際協力、そして先住民問題に対処している。
カナダ外交がカバーする分野は、非常に多岐にわたる。現代の国際社会が直面するすべての課題に関わっている。そのうえで、外交を貫く重要な視点がある。
この記事に関連するニュース
-
トランプのおかげで「プーチンの夢」が叶う?...再来するトランプ・ワールドの外交・内政・経済を徹底予測
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月17日 14時0分
-
“衰退する帝国”のトランプ、一連のトンデモ発言に垣間見る「一貫した国家戦略」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月17日 11時10分
-
天然ガス世界5位の生産国カナダの「見事な決断」 ウクライナ侵攻によるエネルギー危機を救う
東洋経済オンライン / 2025年1月16日 16時0分
-
トランプ発言で注目「カナダ」の日本との"深い縁" キャノーラ油の品種改良の背景に"両国の信頼"
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 16時0分
-
トランプとメキシコとの対立は「中国の漁夫の利」...「アメリカ・ファースト」のオウンゴールとは?
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月15日 14時38分
ランキング
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください