脱炭素が空文化、エネルギー基本計画は課題山積 再エネ低迷、原発と火力の継続が最大の特徴
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時0分
地球温暖化対策計画案においては、2035年度60%削減、2040年度73%削減(2013年度比)の温室効果ガス排出削減目標案が示された。2035年度60%削減目標は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の世界全体の1.5度整合シナリオの中央値(66%)の緩い方の幅に沿わせた水準であり、1.5度に整合しておらず日本の目標として不十分という指摘も多くなされたが、そのまま案とされた。
先進国としての責任を果たすなら、少なくとも世界平均を下回らない66%削減以上、さらに75%削減に届く範囲で目標を設定する必要がある。また、2040年度を軸とするエネルギー基本計画案では、2035年度の温室効果ガス削減目標と関連する数値がまったく示されず、裏付ける根拠を欠いていることも問題である。
以上の通り、今回のエネルギー基本計画案は、気候変動課題の解決のうえでも、エネルギー転換の加速の点でも、課題が大きい。その背景として、決め方の課題も指摘したい。
作成に至るまで、経済産業省・資源エネルギー庁の下では、燃料資源、再エネ、原子力発電、カーボンプライシング、電力市場など多岐にわたるテーマで、数えきれないほどの審議会が開催された。加えて、温室効果ガス排出削減目標を検討する合同委員会や、首相官邸の下のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議も開催され、日頃から政府のエネルギー・気候変動政策を追い続けているわれわれであっても動向をフォローするのは困難であった。
このうち、エネルギー基本計画案の検討の場である、総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会では、下部の委員会で準備された資料に委員が意見を数分述べるだけの形式的な会議が続けられた。周知のことではあるが、審議会は、政府に近い立場の人が多数を占め、政府方針にお墨付きを与える場になっているのが実情である。
同分科会では、最終盤の2024年12月中旬に案が示され、実質的な議論が乏しいまま 翌週には了承された。直後に開催された閣僚級会合もわずか10〜30分で最終案をそのまま了承した。実質的議論も政治的リーダーシップも不在のままでの決定だった。
ここに見られるのは、プロセス全体における経済産業省の大きな力の存在と、審議会で下から積み上げていく政策決定方式における関連業界団体の深い関与である。この構造では、既存の経路に依存した判断が尊重され、大胆な変化が起こりにくく、意思決定の外側にある企業や市民の声も反映されにくい。
しかし、その構造の内側の関係者だけに委ね続けていては、気候変動を防ぐエネルギー転換の実現は図れないことは明白である。そうであるなら、外側にいる主体や個人が関与し、変化を起こすしかない。短い期間だが、1月26日までのパブリックコメントの機会を大いに活用し、積極的に意見を述べたい。
平田 仁子:一般社団法人Climate Integrate 代表理事
安井 裕之:一般社団法人Climate Integrate 公共政策ディレクター
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