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日本製鉄「USスチール買収成功」へのプランBとは トランプ次期政権ではむしろ可能性あり!?

東洋経済オンライン / 2025年1月18日 8時30分

これに対し、クリフス社の提案はまことに虫がいい。「USスチールはアメリカ企業であるべきだ」と愛国心に訴えるが、クリフス社に追加投資できるような資力はない。しかもUSスチールとクリフス社が経営統合すると、シェア100%近い鉄鋼会社ができてしまう。当然、独禁法上の問題が生じるし、それで値上げとなれば、自動車産業などアメリカ国内で鉄を買う業界から反対が出るだろう。

なおかつ、クリフス社の買収提示価格は1株30ドル台後半にすぎない。これではUSスチールの株主にとっては心外であろう。USスチールのバレットCEOは、バイデン大統領の買収阻止命令に対し、即座に以下のような怒りの声明を発出している(拙訳)。

「バイデン大統領の本日の決定は恥ずべきものであり、腐敗している。彼は組合のボスと結託し、この国の未来、労働者、国家安全保障を害した。日本という重要な同盟国を侮辱し、アメリカの競争力をリスクにさらした。中国の指導者たちは小躍りしているぞ」

これに対し、バイデン大統領の買収阻止命令に関する声明文を読んでみると、以下のような情緒的な文言があって唖然としてしまう。

「USスチール社は誇り高きアメリカ企業であり、アメリカ人が所有し、アメリカ人が運営し、アメリカ人の組合労働者による世界最良の企業であり続けるだろう」

だったらなぜ、USスチールの経営陣が身売りを検討しているのか。情けないくらいに政治的な判断となっているわけだが、これは少々、年季の入った話なのである。

アメリカの真の問題は「不当に安い輸入品」にあらず

1990年代のアメリカ経済はITブームに沸いたが、逆に製造業には冬の時代が訪れていた。ただし当時のクリントン政権は、鉄鋼業界の窮状をほとんど顧みなかった。そこに目を付けたのが、その後を継いだブッシュ(ジュニア)政権である。2002年に鉄鋼セーフガードを打ち出し、輸入鉄鋼に関税をかけた。「共和党は民主党と違って、あなたたちを見捨てません」とUSWに歩み寄ったのである。

ブッシュ氏は2004年の再選に向けて、苦境にあったペンシルベニア州などの東部鉄鋼州を狙いにいったのである。ここで持ち出されたのが、「鉄鋼は重要な国家安全保障問題だから」というロジックである。

もちろんセーフガードは一時しのぎの手段にすぎず、アメリカの鉄鋼業は再生しなかった。鉄鋼業を苦しめたのは、レガシーコストと呼ばれる過去の退職者に対する年金や医療保険などの負担である。

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