日本製鉄「USスチール買収成功」へのプランBとは トランプ次期政権ではむしろ可能性あり!?
東洋経済オンライン / 2025年1月18日 8時30分
過去に黄金期を謳歌したメーカーは、従業員に対して手厚いベネフィットを約束してしまう。それが高コスト体質の原因となり、他国の同業者に勝てなくなってしまうのだ。同じことが数年後、自動車産業にも訪れる。今ではGMなどの「ビッグスリー」は、すっかり「ビッグ」でなくなってしまった。鉄も自動車も、真の問題は「不当に安い輸入品」ではなかったのである。
2004年の選挙でブッシュ氏は再選されたものの、ペンシルベニア州では勝てなかった。ただしこの頃から、民主党はハイテク、金融、エンタメ産業などのニューエコノミーに傾斜するようになり、逆に共和党はエネルギーや防衛、素材産業などのオールドエコノミーを取り込むようになっていく。
そして2016年、共和党のドナルド・トランプ候補はついにペンシルベニア州を獲得して、大統領選挙にも勝利してしまう。つまり「ラストベルトの白人ブルーカラー層」が民主党を見放して共和党に靡(なび)くようになったのは、昨日今日に始まったことではない。「クリントンとオバマが見捨てた」票田を、共和党が頂戴したというわけである。
トランプ次期政権では判断が逆転する可能性がある
そこで2020年に民主党が立てたのは、ペンシルベニア州クラレントン出身の「ミドルクラスのジョー」ことバイデン氏だった。今となっては、去り行くバイデン氏はもはやアメリカ経済に対しては責任がない。それでも「民主党は組合の皆さんを忘れていませんよ!」とアピールしなければならない立場なのである。
むしろトランプ次期大統領のほうが、「アメリカ経済を良くしなければならない」という責任を負っている。昨年11月5日の大統領選挙でも、トランプ氏はしっかりペンシルベニア州でカマラ・ハリス氏に勝ってるからね。この問題、意外と次期政権で判断が逆転するんじゃないかと筆者は想像している。
ところで世間全般として、「日本製鉄は2兆円も投資して、大失敗をやらかすんじゃないか」との見方が絶えないように思う。たしかにUSスチールの高炉は競争力がない。すでに8基中、イリノイ州の2基は休止中である。よくテレビに出てくるペンシルベニア州の2基でさえ、年間生産量は計290万トン程度である。インディアナ州の4基計750万トンがかろうじて気を吐いているのが現状だ。
実はUSスチールは、高炉よりも電炉のほうが優秀で期待が持てるのだ。2019年にスタートアップであるビッグリバー・スチールを傘下に収めたもので、電炉が2基(計330万トン)あり、さらに2基(計300万トン)を建設中である。
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