「AIで復活の故人が喋る」不気味の谷より心配な事 日本で始動したAI故人ビジネスの実情を追う
東洋経済オンライン / 2025年1月21日 9時40分
生前のデジタルデータを生成AIに学習させて故人を「復活」させる。中韓ではすでに広がりをみせているサービスが、日本でも本格的に動き始めた。新しい可能性と危うさを同時に抱えるAI故人ビジネスの実情を追う。
身を乗り出して、自然に微笑むAI故人
「皆さん、今日は私のために集まってくれて本当にありがとう。こうしてみんなが私を思い出し送ってくれること、心から嬉しく思います」
半生を共に歩んだ愛用のカメラを並べ、自宅と思われる部屋から画面に向かって穏やかに語りかける男性。2024年12月12日に98歳で亡くなり、その4日後に行われた通夜式で初めて披露された映像だ。
しかし、この映像は男性の生前には存在していなかった。亡くなった翌日に遺族がAI故人サービスに依頼し、その翌日である14日に納品されたものだ。つまり、故人本人によるものではなく、故人が語りかけるようにAIが生成した映像となる。
遺族が用意した原稿をベースに、画面の男性は生涯を語る。若い頃に競輪選手として活躍し、引退後は写真家に転身。晩年は一人息子の一家と暮らし、孫にも囲まれた。
「私のことをこうして思い、笑顔や涙を送ってくれる皆さんに、ただただありがとうと伝えたい。それが私の最後の言葉です」
時に身を乗り出し、瞬きもする。締めの言葉を話しながら口角を上げて穏やかに微笑む。その自然な仕草は、知らなければとてもAIで生成されたとは思えない。
この90秒の映像は、バーチャルAI故人サービス「Revibot」によって作られたものだ。AI生成を手がけるITベンチャー・FLATBOYSの技術協力を得て、冠婚葬祭事業を手がけるアルファクラブ武蔵野が2024年12月10日に提供を始めた。初期費用は9万9800円(税込み)からとなる。
これだけの品質のAI故人が、個人でも十分手の届く価格で得られる。しかも納期が短いので、葬儀場にも持ち込める。すごいことだ。ただ、それ以上に怖さを感じる人も少なくないだろう。
その怖さは、AIが生身に近づく過程で生じる「不気味の谷」とはまた違い、人間の尊厳に関するタブーに踏み込む警戒感に近いかもしれない。
デジタル故人を囲う「警戒の壁」
AI故人を含めたデジタル故人を商品として捉えたとき、この警戒心は克服すべき最大の壁といえる。そして、この壁を越えた例はまだほとんどない。
たとえば、2014年にマサチューセッツ工科大学の起業家プロジェクトから生まれた「Eternime(エターナム)」は故人のSNSなどから集めた情報からアバターを作る構想のサービスで、4万6000人を超えるユーザーからの注文を受けたが、倫理的な反発を解消する糸口を見つけられないままスタートできずに何年も足踏みし、やがて公式サイトを閉じてしまった。
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