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「選挙の推し活化」と希望格差社会の因果関係 「希望なき社会」の選挙で何が求められるのか

東洋経済オンライン / 2025年1月22日 10時0分

近年には、伝統的な中間集団が衰退していることはよく言われている。労働組合の組織率低下は止まらないし、そもそも、労働組合から排除されている非正規雇用者の割合は増え続けている。業界を構成する伝統的自営業は衰退する一方で、ベンチャーやフリーランスなどが増えている。

宗教組織や政党組織も高齢化し、子供や孫の組織離れが目立つようになった。また、夫や親が組織に属していても、妻や子どもたちが組織の一員だという意識も失われつつある。

特に、組織離れは、若者や主婦やパートが多い既婚女性層などに顕著であろう。そして、アイドルやスター、アニメキャラクターやアスリートなどの「推し活」の主力は、まさに、伝統組織とは無縁の若者や既婚女性であることに注目しよう。

選挙の推し活化のプッシュ要因

選挙の推し活化が進むプッシュ要因を挙げてみよう。

まず、現代社会には、労働者対資本家といった大きな利害対立がないことが挙げられる。日本社会はもともと階級意識が弱いし、誰が当選しても、自分の生活が大して変わらないと思っている。

労働組合ではなく、自民党政府が企業に賃上げを要請する時代である。昨年の総選挙前に、私はある番組で各党の少子化対策を比較するという番組のコメンテーターをしたが、どの政党も少子化対策は必要で、高等教育費無償化などの方向性も一致している。ただその規模と速度と重点が少し違うだけであった。

特定の階層の利害を代表せず、国民全体の代表であることを標榜する政党が増えれば、それだけ政策の差はほとんどなくなるのだ。

また、イデオロギーなき時代を反映して、イデオロギーで投票するということも現実味を失いつつある。革命的志向や伝統回帰のように過激な主張をする政党もないわけではないが、多くの候補者や主要政党の「目指すべき将来の社会像」は、現行の社会の延長上にある。

そして、国民の大多数も、現在の社会制度や外交はおろか、政策の大きな変革は求めていない。だから候補者や政党は、「今とは違った社会をめざす」とは言えずに、現行政策の微修正に終始する。

選挙は「好き嫌い」共有の絶好の場

続いて、プル要因も挙げておこう。人は、自分の「好き嫌い」の感覚を肯定してほしいという欲望が存在する。その方法として、オタクやマニアと呼ばれていたものが、「推し」という言葉に現在収斂しつつあるように見える。

そして、SNSの発達によって、好き嫌いの感覚がどれだけなのか、どれだけ自分と同じ感覚の人がいるのか「目に見える形」になっている。そして、概して推しの人は、自分の仲間が増えることを喜ぶ。そのために、「推し」を応援するだけではなく、一緒に推してくれる人を増やそうとする。

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