トランプ後「EV一辺倒」が変化する自動車産業 より現実的な脱炭素戦略への変化が加速化
東洋経済オンライン / 2025年1月22日 7時50分
また、エネルギーの多様化に合わせ「適地適車」という考え方が重要となる。これは、自動車はその国にあるエネルギー源に適したパワートレイン開発を行うべきであるという考え方だ。
ブラジルでは、トウモロコシからのバイオ燃料で車を走らせている。トヨタは、2023年にバイオ・ハイブリッド車の現地生産を発表し、2024年も投資拡大を発表している。
日本メーカーにチャンス到来
スズキは、インドで「牛糞燃料からの自動車」の普及を目指して動き出している。これは、まさに「適地適車」だ。
インドには牛が約2億頭おり、牛糞からメタンを取り出し車の燃料にする。同社は自社サイトで、「牛の糞尿には二酸化炭素(CO2)の28倍の温室効果を持つメタンが含まれ、大気中に放出される。このメタンの大気放出を抑制し、牛の糞尿に含まれるメタンから自動車用燃料を精製する」という。
さらにスズキは「バイオガス生産後の残りかすは有機肥料として利用でき、インド政府の有機肥料促進政策に貢献できる」と述べている。スズキは、インドの政府機関と提携し、本年から順次4つのバイオガスプラントを立ち上げる予定だ。
世界はロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギー供給不足・世界同時インフレという深刻な社会問題を経て「より現実的な脱炭素戦略」へと変化してきている。すなわち、脱炭素を行うにも、エネルギーの安定供給が大前提でなければならないということだ。
そのためには、電気だけでなく多様なエネルギー源で技術イノベーションを起こすという「日本的アプローチ」が再評価されるだろう。自動車の脱炭素も「EV一辺倒」というアプローチは見直される時が来ている。トランプ新政権や欧州の政治体制の変化は、そうした流れを確実なものにしていくと期待したい。
土井 正己:クレアブ代表取締役社長、山形大学客員教授
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