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古代ローマの頃から変わっていない戦争の性質 戦争は始めるのは簡単だが終えるのは困難

東洋経済オンライン / 2025年1月24日 15時0分

戦争と平和にまつわるラテン語の格言をめぐって対談したヤマザキマリさん(右)とラテン語さん(左)(写真提供:SBクリエイティブ)

古代ローマを描いた『テルマエ・ロマエ』などで知られる漫画家・随筆家のヤマザキマリ氏と、古代ローマの公用語であったラテン語を研究し、Xでも人気のラテン語さんが、古代ローマ時代から今に残る、戦争と平和にまつわる格言の数々について対談しました。

※この対談は2人の共著である新刊『座右のラテン語』からの抜粋です。

正当防衛か侵略行為か

ラテン語:まさに現今の世界情勢も混沌を極めていますが、戦争というトピックでラテン語世界を見ていきたいと思います。時事問題に通じるラテン語です。また、戦争といった悪にどう向き合うか、どう用心して生きるかといったことにも話を繋げられればと思います。

まず、こちらの格言です。

inter arma silent leges「法律は武器のなかにあっては沈黙する」

キケローが裁判において、殺人を犯したミローという人を弁護する立場でこの言葉を言いました。

殺されそうな人は相手を殺してでも自分を守る。それは当然のことだろう。だから法律に関係なく、正当防衛で相手を殺していい。もともとはそういう文脈における言葉だったのですが、今では「戦時中は何でもありになってしまって、法律が無視されてしまう」という解釈で広がっている格言です。正当防衛でなく戦争批判の文脈に変化したのですね。

ヤマザキ:私も後者の意味で捉えました。今の時代で言えばイスラエルとパレスチナ、そしてロシアとウクライナにしても法律の効力は希薄です。武器は大きなお金を動かしますから、法律はそこに服従してしまうのでしょう。

ラテン語:正当防衛の文脈で捉えても、現代にリンクする部分があります。つまり、正当防衛が武力行使の建前になってしまっている。

ヤマザキ:自分たちが正義であり、正しいと思っている勢力からすれば、侵略も正当防衛になるということですよね。

ラテン語:そうです。アメリカが大量破壊兵器の存在をでっちあげて中東に侵攻したように。

ヤマザキ:こうした格言が他の名言とともに20世紀以上も残り続けているその背景に、常に戦争を起こさないと気が済まない人間の性質というものを痛感させられます。

終わらない戦争

ラテン語:続いては古代ローマの詩人、ホラーティウスが古代ギリシャ詩の『イーリアス』について『書簡詩』で表現した文章です。

quicquid delirant reges, plectuntur Achivi「王たちがどう狂乱しても、アカイア人たちがそれを償うことになる」

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