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「脱サラしたプロ棋士」1年半で見た"棋界のリアル" 小山怜央四段が直面した、厳しさと凄みの日々

東洋経済オンライン / 2025年1月25日 9時0分

地方出身の棋士が恵まれているのは、地元に応援してくれる人たちがたくさんいて、後援会などが作られることである。昇段すると祝賀会も開かれ、地元の市長や名士らも参加する。地方紙に載り、地元のPRも担う。

棋士に東京や大阪など大都市の出身者が多いのは、小さい頃から指導者や強い相手と指せる環境に恵まれていることによる。イベントや将棋教室などファンと接する機会も多いが、1人の棋士を応援するための集まりはあまりない。

プロになったときには脱サラから棋士になったことが注目され、自らも「エリートとは違った世界を見せたい」と語った。

将棋界では若いほど期待値が高く、10代でプロになった者が注目される。小山は「奨励会」を経ずに、会社員という遠回りを経験してきた。同時期にデビューした棋士には、小山より一回り年下の者もいる。

「昨年、藤本渚五段と対戦したのですが、少しでも隙をみせれば一気に持って行かれてしまう感じでした。若手のエリートの強さを肌で感じたのは確かです。藤本五段や最近プロになった吉池隆真四段は、藤井聡太七冠の次の世代という印象です。ついにこの世代が来たのかという気持ちがしました」

「藤井聡太さんを倒してください!」

30歳の遅咲きの棋士が歩む道は、これからも険しいかもしれない。今の将棋界で、自分の立ち位置をどのようにとらえているのだろうか? ライバルや年下のタイトルホルダーたちへの率直な気持ちを聞いた。

「同世代はすでにキャリアを積んでいる人が多いので、先をいく存在という感じです。誰かと競い合うよりも、自分の中で目標とした勝ち数を目指したい。

藤井七冠や伊藤匠叡王(2人とも22歳)は、もう雲の上のような存在になってしまっていますから。近づいていきたいですけど、現実的な目標を1つずつクリアしていくしかないと思います。   

自分は岩手で唯一の棋士として、地元に呼んでいただき、たくさんの声援をもらえています。その自覚を持って、故郷の力にもなっていきたい」
 
昨年秋に『岩手将棋まつり』が開かれ、小山は子どもたちに指導対局を行った。真剣に盤上を見つめる姿に、 小山はかつての自分を重ねていた。彼らの中にも、将来プロになりたいと思っている子がいるかもしれない。

いつか岩手から新しい棋士が生まれたらーー。

そんな未来を想像すると嬉しくなった。

集まった子どもたちにとって、小山は憧れの存在だ。

「藤井聡太さんを倒してください!」

輝ける瞳に、ヒーローは少し照れながら答えた。

「はい。頑張ります」

【写真を見る】対局中とは別人のような「小山怜央四段の素顔」(7枚)

野澤 亘伸:カメラマン/『師弟~棋士たち魂の伝承』著者

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