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築66年「スラム化した廃墟」の驚くべき大変身 「九州リノベ」の金字塔、冷泉荘が放つ存在感

東洋経済オンライン / 2025年2月2日 7時30分

福岡にある「冷泉荘」の管理人を務める杉山さん(写真:筆者撮影)

日本は「新築信仰が強い」と言われる一方で、街を見渡せば存在感や色気のある年嵩を重ねた建物がそこかしこにある。新しいかっこいい建物もいいけれど、今ある古い建物を長く使うのはもっとかっこいい。本連載では、さまざまな工夫で新たな住まいや仕事場となったり、文化的拠点に生まれ変わっている“廃居”を紹介していく。

【写真で見る】築66年、福岡市の「冷泉荘」。建てられた当時は高級住宅だったが、その後、スラム化し、ホームレスやマフィアの拠点になっていた過去も

今回は福岡市にある築66年の「冷泉荘」。一時期はスラム化した物件は、いかにして文化財になったのか。

1958年の建設当初は高額物件だった

今でこそリノベーションは当たり前の選択だ。だが、25年前、福岡で築41年のまったく手入れされていない建物の経営を引き継いだ吉原勝己さんは途方に暮れた。

漏水を入居者が放置、室内に苔が生えている部屋があるなど建物が荒れているだけでなく、入居者、建物に出入りする人達にも問題があったのだ。どうしたら再生できるか。苦闘が始まった。

今から四半世紀前、化学系のメーカーに勤務していた吉原さんが継いだのは博多で最初に栄えた川端通商店街の1本裏手にある冷泉荘をはじめとする数件の不動産。

もともとは農業をしていた父が戦後観光旅館を始め、その収益を使って不動産経営に転身したそうで、知らない身からすると不動産の相続はうらやましい気がするが、それが廃墟状態だったらどうだろう。

【写真で見る】築66年、福岡市の「冷泉荘」。建てられた当時は高級住宅だったが、その後、スラム化し、ホームレスやマフィアの拠点になっていた過去も

冷泉荘は1958年に建てられた地上5階、地下1階の建物で、建築当初は高額物件だった。福岡市中心部は福岡大空襲で焼け野原になっており、当時は復興途上。住宅としては木造の風呂無し長屋しかない時代に建ったRC造で、別棟には入居者専用共同浴場もあるアパートである。

しかも立地は当時、博多でも有数の商店街の1本裏手。言ってみれば銀座の大通りのすぐ裏手にある賃貸住宅のようなもので、人気を集めたのも当然だろう。

だが、それから40年余。時代は変わった。福岡市は旧城下町エリアの福岡と、それ以前からの商業の街の博多、という2つの中心地が拮抗してきたが、天神エリアの勃興で博多は衰退。復興を期して1999年に行われた博多リバレインの開発も当時はいまひとつという状態で、冷泉荘に隣接する川端商店街も歩く人の姿がないほどに寂れていた。

苔が生え、マフィアの隠れ家になっていた

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