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築66年「スラム化した廃墟」の驚くべき大変身 「九州リノベ」の金字塔、冷泉荘が放つ存在感

東洋経済オンライン / 2025年2月2日 7時30分

「空室が出たら改修して貸す」ということを1~2年繰り返しているうち、きちんと手を入れてリノベすることで家賃は上げられるという手ごたえを感じるように。家賃を少しずつ上げていければ、そこで生まれる収益で建物に手を入れられるようになり、古い建物を使い続けられるようになる。このやり方なら廃墟を再生できるかもしれない。

そこで2004年からは冷泉荘を空室にする作業を始めた。入居者に近隣物件を紹介し、引っ越し代を出して退去してもらったのだ。マフィアの退去には警察にも協力をしてもらい、1年かけて全室を空にした。

満を持して新たな入居者募集が始まったのは2005年。代官山の同潤会アパートをイメージし、アーティストを中心にギャラリーやアトリエなど住宅以外の用途で部屋を使いたいというクリエイティブな層を募集した。1室ずつのリノベーションであれば特にテーマは必要ないが、1棟をまるまる変えるのであれば統一したテーマは必要と考えたのである。

「廃墟、セルフリノベなどに興味を持つ層、物事を自ら変えていける人たちとしてアーティストを想定しました。家賃は3万5000円で契約期間は3年。寂れてはいたものの、中洲、天神から徒歩圏の福岡の中心部としては格安な家賃設定だったこともあり、18戸の募集に100組くらいの入居希望者が集まりました」

賃貸条件としてはDIY可で原状回復は不要とした。それまでもDIY可という物件はあったものの、当時は現状に戻すことが要件とされることが多かった。となると退去時に原状回復のために多額の費用がかかる。

そのため、長らくDIY可が普及しなかったのだが、冷泉荘ではその条件を撤廃。同時にDIYで造作したものなどの買い取りを家主である吉原さんに請求しないというルールにした。それによって入居者も、家主も安心してDIYができるようになった。

また、当初半年ほどは工事期間に充てることを考え、入居後半年は家賃不要(フリーレント)にしている。家主負担の工事についても入居者に希望を聞き、解体してほしくない部分は残すようにした。

「定期借家制度」を取り入れた

もう1つ大きいのは、入居期間を3年間と限定する定期借家制度としたことだ。これは2000年3月1日に施行された法に基づくもので、それまでの一般賃貸借では借主の権利が強く、契約期間が終わっても借主が契約を継続したいと考えた場合、家主側から契約を終わらせるのは難しかった。

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