築66年「スラム化した廃墟」の驚くべき大変身 「九州リノベ」の金字塔、冷泉荘が放つ存在感
東洋経済オンライン / 2025年2月2日 7時30分
それ以上にひどかったのは何の手入れもされずにきた冷泉荘。かつての高額賃貸は、建物は放置されたままで入居者が高齢化し、スラムとなっていたのである。
「建物を改修して使い続けるという発想のない時代の物件だったので、一度も大規模改修が行われておらず、漏水もひび割れもすべてそのまま。中には入居者が漏水を放置したために青々とした苔が繁茂している部屋もありました」と吉原さん。
「1階の高齢女性入居者が近くの公園を住まいとするホームレスの人たちと仲が良かったため、彼らがよくうろうろしていましたし、大陸系のマフィアの隠れ家があると警察から連絡も来ました。そうした部屋は手入れが行き届き、天蓋のあるベッドなど豪奢な家具が置かれていました」
その結果、冷泉荘のある路地裏は周囲に住む人たちからは敬遠されるようになっていた。中洲で飲んだ人たちが生理現象に耐えかねて駆け込む、違法にゴミが捨てられるような治安に問題がある通りとして認識されていたのだ。
所有者としては入室して5秒と我慢できないような悪臭を放つ部屋も、公安から目を付けられるような部屋もお断りである。近寄ってはいけないと言われるような建物はさらにうんざりだ。
だが、それまでサラリーマンだった吉原さんには、建て替えのために借金をする発想はなかった。とりあえず、なんとか使い続けるしかない。そこで海外も含めて古い物件を使い続ける事例を本で探し始めた。会社に勤務していた頃から情報収集は仕事の一部だったそうだが、この時期、リノベーションに関する情報は少なかった。
日本にも「新しい風」が吹き始めていた
しかし、面白いことに吉原さんがほかに引き継いだマンションでリノベーションなるものを試してみようと思った2003年前後は日本の賃貸住宅、デザインに大きな変化があった年だった。
2006年に良品計画に買収されるIDÉEが最初で最後のデザイナーズ賃貸住宅を建てたのが2003年。2020年に閉館した日本のデザインホテルの草分けと言われる目黒通りの「Hotel CLASKA」がリノベーションを経て開業したのも同じ年だ。個性的な賃貸住宅を扱う東京R不動産が活動を始めたのもこの時期である。
「世界には廃墟状態のビルを美しく改修、使い続ける事例がありましたし、日本でも数は少ないものの古い建物を使う活動、デザインを重視する商品が生まれ始めており、それらを参考に素人ながらデザインができる人たちに他物件の空室の改修を依頼しました」
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