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築66年「スラム化した廃墟」の驚くべき大変身 「九州リノベ」の金字塔、冷泉荘が放つ存在感

東洋経済オンライン / 2025年2月2日 7時30分

ところが、定期借家契約であれば契約期間満了後、契約は確定的に終了する。場合によっては再契約ということもあるが、とにかく一度必ず終了するのが定期借家契約である。

「その時点では建物が長く維持できるかがわかっておらず、3年間は試行期間とし、調査・検討のために時間を稼ごうと思いました。一方で入居者を募集するためには最低でも危険だった外壁を改修する必要があり、初回の募集ではその費用を捻出するために3年間の契約で月額3万5000円を18戸ということで家賃を設定しました」

また、この試行期間中に物件のイメージを変える必要があるとも考えた。近づいてはいけない物件のままでは経営は安定しない。そこで管理人兼PRを外部に依頼し、この3年間は地元を中心にあらゆる機会を捉えてメディアに登場。ブランディングに注力した。

同時に建物のコンクリート強度試験などハード面の調査を実施。建物がまだまだ長く活用できることがわかったことから、3年間の試行期間後も耐震改修など大規模な改修をして建物を使い続けることを決めた。

そして3年が経過し、初回の入居者の大半が退去。新たな入居者を募集した。賃料は1万円から1万5000円アップさせた。「ただ、初回入居者の中には3年後に建物が解体されると思っていた方も多く、話が違うではないかと齟齬が生じてしまい、2回目の募集には苦労しました」。

コミュニケーションを主業務とする管理人の存在感

入居者との間のコミュニケーションが不足していたのである。ここで痛い思いをしたことから、冷泉荘にはコミュニケーションを主業務とする管理人が存在する。

2010年以来3代目として管理人を務める杉山紘一郎さんは冷泉荘の顔として物件や入居者に関わることにすべて対応するスーパーな存在。訪れると必ず、杉山さんに挨拶しに管理事務所に立ち寄るという人も多い。

普通は管理人というと掃除だけの人と思われているようだが、杉山さんは掃除をしながら入居者と話をし、訪れる人がいると建物内を案内し、レンタルスペース利用希望者が来るとそのやりたいことを実現すべく相談に乗る。

ギャラリー、劇場、ライブ会場などと多様に使える会場だけに周囲に迷惑をかけないように使うためには事前の打ち合わせや根回しも必要で、毎回、手間がかかる。さらに毎月1号出している『月刊冷泉荘』を編集したり、イベントのPRも手掛けている。

杉山さんの常駐以降、ようやくハードとソフトの連携が取れ始め、それからの冷泉荘は外部からも評価され始めるようになる。2010年に文化発信拠点「リノベーションミュージアム冷泉荘」というコンセプトを掲げてから福岡市都市景観賞の活動部門賞の受賞(2012年)を皮切りにさまざまな賞を受賞。

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