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「日本の下水道管」を劣化させている6つの要素 埼玉県八潮の事故はまったく他人事ではない

東洋経済オンライン / 2025年2月4日 8時0分

⑤地下埋設物や工事の影響

下水道管の近くには、水道管、ガス、電力ケーブル、通信ケーブルなどの埋設物が多数存在する。そのため工事の際に誤って破損させるケースがある。

今回の現場では、下水道管の上部に位置する雨水管が破損し、水が漏れた。下水道には雨水と生活排水を一緒に流すか、分けて流すかで2つの方式がある。

一緒に流す合流式は、
・下水道が1本ですむので建設・維持管理費が少ない
・他の地下埋設物との競合も少なめ
・管径が大きく勾配が小さいため汚物が管内に堆積しやすい
・対応できる流量を超えると、未処理のまま河川などに放流される。そのため水質汚濁を招く可能性がある
――という特徴がある。

もう一方の分流式は、
・2本の管路が必要で建設・維持管理費が高い


・他の地下埋設物と競合が多め
・汚水は下水処理場で処理されるので河川や海への流出はない
――という特徴がある。

今回の場合、分流式を採用しており、破損した下水道管の上部に設置されている雨水管も破損し、そこからの水が事故をよりやっかいなものにした。分流だからこそ水が汚れやすく(雨で薄まらない)、硫化水素が発生しやすいという声もある。

気候変動で下水道にかかる負荷も増加

⑥気候変動による影響

近年、集中豪雨や台風の増加により下水道にかかる負荷が増加。水圧が異常に高まることで管の継ぎ目から漏水や破損が発生する。また、気温変化による管路への影響も注目されている。

株式会社天地人の提供する「宇宙水道局」は人工衛星から地中にある水道管の劣化を診断するが、その際のポイントの1つが地表温度である。熱は地下の水道管まで到達し、劣化を進めているという。

水道管の老朽化や破損を防ぐために、現在さまざまな対策が取られている。主な取り組みは、点検・調査の強化と効率的な工事技術の活用である。

下水道管の劣化や破損を早期に発見するために、センサー、ドローン、AI(人工知能)などの最新技術が活用され始めている。これにより、下水道管の状態を定期的に監視し、問題が発生しそうな箇所を的確に特定することが可能になる。たとえば、AIは過去のデータから劣化が進みやすい場所を予測することができ、事故が起きる前に対策を講じることができる。

工事を効率化するために注目されているのが、「非開削工法」だ。これは、道路を大規模に掘り返すことなく下水道管を補修できる。たとえば、CIPP工法(現場内硬化工法)は、古い下水道管の内側に樹脂を含んだライナー(柔らかい布状の材料)を入れ、熱や紫外線で硬化させることで、新しい管を既存の管の中に作る。

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