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「日本の下水道管」を劣化させている6つの要素 埼玉県八潮の事故はまったく他人事ではない

東洋経済オンライン / 2025年2月4日 8時0分

また、SPR工法(スパイラル工法)は、硬質塩化ビニル製の材料を既存の管の内側にスパイラル状に形成し、その隙間に裏込め材を注入することで、既存管と一体化した強固な新しい管を作る。そのほかにもさまざまな方法があり、工事期間の短縮やコストの削減にも効果がある。

下水道担当職員の数は24年で約2万人減った

老朽化が進めば進むほど、点検や調査の重要性が叫ばれるだろう。しかし、現実には多くの自治体が人手不足と予算不足に直面しており、「5年に1回」とする法定以上の点検は難しい。

下水道担当職員の不足を指摘する声もある。当該職員の数は1997年度の約4万7000人から、2021年度には約2万6900人に減少している。この間、経費削減や組織の合理化が進められてきたが、それが点検や維持管理の遅れを招いている。

国土交通省は、官民連携(PPP)の推進を通じて下水道事業の効率化を図っている。しかし、民間企業側でも技術者不足が深刻であり、すべての課題を解決することは難しいのが現状だ。

下水道事業は現在、深刻な資金難に直面している。その理由の1つは、老朽化した下水道管の更新に必要な予算が不足しており、その結果、多くの自治体では、必要な更新作業が遅れている。

本来、下水道事業は独立採算が原則であり、使用料で運営される。しかし実際には、多くの自治体が税金(一般会計)からの補助金に依存しており、事業全体の収支が黒字であっても、収益の約28.7%、設備投資の約17.1%が他の財源で補填されている。この構造は、自治体財政にとって不安定な要素となっている。

水道事業と下水道事業の圧倒的な違い

同じ水量を扱う場合でも、下水道事業は水道事業よりも圧倒的にコストがかかる。それは、下水道管は水道管よりも口径が大きく、埋設も深いことから掘削作業が大規模になるため工事費用が水道に比べて3〜4倍になることが1つ。下水の流れを維持するために複数のポンプが必要で、その設置費用と維持管理費も重い。

一方で、使用料収入が実際のコストに見合っていないケースが多く、料金の適正化が急務となっている。このままでは、全国の下水道事業が立ち行かなくなる可能性が高い。

そうなれば、自治体の財政基盤そのものが揺らぎ、最終的には市民生活に深刻な影響が及ぶことになる。国は自治体任せにせず、抜本的な対策を打つべきだ。

今回の事故は、単なる「道路の陥没事故」ではない。これは、全国各地で同じような事故が起こり得るという警告のサインである。今こそ、下水道の維持管理と更新投資に目を向けるべき時だ。「見えないから大丈夫」ではなく、見えないからこそ注意が必要である。

橋本 淳司:水ジャーナリスト

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