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「終活は60歳からがいい」と禅僧が勧める深い理由 「お金の相続」より大切な「心の相続」

東洋経済オンライン / 2025年2月7日 8時30分

現実的な問題として、老いが進み、病を得てからでは、満足な死に仕度はできません。60歳ならまだ、行きたいところに行き、食べたいものを食べ、会いたい人に会いにいくだけの気力体力があるでしょう。

「死に支度なんて縁起でもない、気が進まない」という気持ちはわかります。

しかし「いつ死ぬかわからない」という事実から目を背けていては、死の恐怖もかえって募るというもの。逆に、死に支度を早めに済ませた人からは、「残りの日々を思うと、人生が愛おしくなってきた」という声が聞こえてきます。

死に支度は確かに死ぬための備えですが、同時に、死ぬまでの日々を有意義に生きるための備えでもあるのです。

では、死に支度とはどのようなものか。一般的には、死を前にしての心配を一つひとつ解消していくことを指します。

例えば、自分が死んだらどこのお墓に入れてほしいか、家や土地、現金などの財産を誰にどう分けるのかなど、いわゆる「相続」に関するものです。

特に財産分与は家族間の仲違いの種ですが、これらは遺言状によって明確に意思表示をしておくことで、おおむねトラブルを避けられるでしょう。

しかし、思い残すことなく旅立つには、そうした形あるものの相続だけでは足りません。

相続にはもうひとつ「心の相続」があります。それは、自分が歩いてきた人生の道のりや、そこから学んだ経験を次の世代に継いでもらうことです。

先ほど申し上げたように、人の死には、肉体の死と、遺族や近親者、友人の心から、故人の存在が消えたときの死の2つがあります。心の相続は、2度めの死を遠ざけるためのものだと言えるでしょう。

そもそも本来の相続とは、心の相続のことを指すということも覚えておきましょう。相続という言葉自体が、もともとの意味は、師匠が弟子に教えを伝えることであり、仏教に由来しているのです。

自分の「生きた証」を受け継いでもらう

心の相続のため、ぜひしていただきたいのは、「家族の歴史」の継承です。自分の祖父母の話や、祖父母から聞いた先祖の話を、子供や孫に聞かせるのです。

三世帯同居の世帯が普通だった時代は、祖父母から若い世代へと、家族の歴史が受け継がれていたものです。

しかし、核家族化が進んだ昨今は、家族の歴史の語り部がいません。それは、自分の代まで語り継がれてきた家族の歴史が、途絶えてしまうということ。子どもたちが、自分たちのルーツを辿れないということ。先祖を2度めの死に追いやるような真似は、あなたもしたくはないはずです。そうであるならば、祖父母にかわり、あなたが家族の歴史の語り部になりましょう。

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