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貨物列車の運転席「同乗取材」で見た乗務のリアル 青函トンネル通る、JRの長大編成コンテナ列車

東洋経済オンライン / 2025年2月10日 6時30分

運転中の運転士には絶対に話しかけてはいけないと念押しされた。何か疑問があれば同乗するJR貨物の添乗員に質問してほしいという。したがって、この後の記事中に出てくる運転士のコメントは、運転後の取材で得たものである。

1月29日の昼、青森の地に降り立った。曇りだが時折晴れたり雪が舞ったり、一言で表せないような天気である。

青森駅近くにある青森総合鉄道部で事前レクチャーを受けた。運転士は運転中に個人スマホを使用することが禁じられており、電源をオフにして乗車している。同乗者も外部からの誤解を避けるため、スマホの使用が禁じられる。カメラを使った撮影の際は、運転の支障にならないようにフラッシュをオフにするようにという説明もあった。

「1人の運転士が1回に運転するのはだいたい3時間くらいです」と、JR貨物青森総合鉄道部の大場亮太郎部長が説明してくれた。運転中にトイレには行けないので、乗務前の体調管理には気を遣う。

旅客列車と貨物列車の運転の違いについても大場部長が教えてくれた。最大の違いはパワーウエイトレシオ(重量と出力の比率)だという。

たとえばEH800形の出力は4000kwで、機関車にコンテナ貨車20両を合計した重量は1100トン程度。これに対して、全長約400mで貨物列車の長さに近い16両編成の新幹線の場合、出力は1万7000kWで1編成あたりの重量は満員の客を乗せても800トン程度。同じ出力で比べると牽引する重量は7倍程度の開きがある。つまり、貨物列車の出力は新幹線の約7分の1にすぎず、同じ馬力で新幹線の約7倍の重量を動かす必要がある。しかも、多くの車両にモーターが付いている新幹線と違い、貨物列車は出力が先頭の機関車のみに集中しているため、空転防止にも気を使う必要がある。

JR貨物五稜郭機関区の吉田宗平副区長は次のように説明する。

「貨物列車の運転士は先々を予測して運転します。たとえば、上り勾配なら坂の真上でブレーキをかけるのではなく、真上の手前で動力を切って、あとは重さを利用して惰性で上る。うまい運転士ほど“手数(てかず)”が少ないといいます。動力を切った状態で運転する距離が長く、機器を動かす回数が少ないのです」

先々を予測して運転するためには、「自分が運転する区間について、勾配、曲線、信号や標識などの位置を頭に叩き込んでおく必要がある」とのことだった。

札幌行き貨物列車に同乗

今回同乗取材を行うのは越谷貨物ターミナル駅(埼玉県越谷市)を0時20分に出発した3063列車。20両のコンテナ貨車を牽引し、コンテナの中には飲料、家電、宅配貨物などが積まれている。

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