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出版不況に「超豪華な無料雑誌」京都で爆誕のワケ 紙にこだわる大垣書店が勝算見込んだ本屋の未来

東洋経済オンライン / 2025年2月11日 14時30分

「本が作れる本屋」が誕生

書店は出版物を売る場というだけでなく、人が集まり、ものが生み出される場所にしたいという構想を大垣編集長はもっている。はじまりは、2021年に彼がオープンさせた「堀川新文化ビルヂング」だ。

京都市上京区、西陣の、古い堀川団地の最北棟の跡地に建った、書店、ギャラリー、カフェ、印刷工房、レンタルオフィスが併設した複合ビルである。

1950年から1953年にかけて建った店舗付き集合住宅・堀川団地周辺地域の再開発、活性化の一端を担っている。『KYOTOZINE』創刊号の中にも、ビルのある堀川商店街の記事が掲載されている。

『KYOTOZINE』の創刊号の表紙で、京都在住の作詞家・松本隆さんが『KYOTOZINE』のロゴマークが印刷されたのれんをくぐっている場所が、堀川新文化ビルヂングである。

「本とものづくりが楽しめる場所として地元に長く愛される書店とギャラリーに育てていきたい」という思いもあり、印刷工房で自費出版ができるようになっている。

批評誌『羅』はこのビルから発信されたものだ。書店オープンのときは『理想の書物』(ちくま学芸文庫)という品切れ、重版未定になっていた本を、大垣書店が経費を負担し限定再販した。

「堀川新文化ビルヂングを建てたとき、『本が作れる本屋』とコンセプトを掲げたことが、3年目にしてようやく具体化してきました」

当時、近隣には書店がない状態であった。近隣に限ったことでなく、どこも書店が減っていた。そんな中、新しい書店を出店するうえで、「本が作れる本屋」にする――これが大垣編集長の考えた書店自体を長く続けるための方法論の1つだった。

「自分で作って自分で売るほうが当然、利益率も高いですし、値段設定も自由にできます」

雑誌作り、意外と経営面でもプラスに

既存の書籍の限定復刻、ギャラリーで行った展示の図録制作、フリーマガジン創刊、そして、書籍に近い雑誌『KYOTOZINE』の創刊――。

「雑誌のよさは、いろいろな情報が集まってくることです。また、たとえば、掲載した商品を店頭で販売することで、自分たちが作った本の世界の中身をもう一度、本屋で展開することができる。

リアル書店と雑誌というメディアとの関係がより近くなるという意味でも、雑誌を作る労力はかかるものの、書店の経営面から見てもプラスになります。

本づくりを、本屋自体を支えてくれる1つの事業に育てたいと思っています」

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