1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

あれから1年「能登半島地震」で見えた"洗濯問題" 衣類の汚れや臭いは「被災者の精神的な負担」に

東洋経済オンライン / 2025年2月12日 16時0分

そのセーターはクリーニングが必要なもので、筆者らは「申し訳ありませんが、対象外のアイテムなのでお預かりできません」とお断りしました。すると、その男性は「なんだよ、セーターは洗ってくれないのか」と、不満を口にしたのです。

この時、筆者らは大きな誤解をしていたことに気付きました。

「災害」「被災地」「避難所」というと、命を守ることが最優先される極限の状況を思い浮かべがちです。しかし、発災直後の混乱を脱した後は、できるだけ普段と同じ生活水準を維持したいというのが、多くの被災者の本音なのです。

「着たい服を着られる」ということも、いまや日常の重要な要素の1つ。それを災害時でも維持することが求められているのです。

こうした気付きから、洗濯支援は単に「清潔さ」を維持するだけでなく、健康管理や精神的ケアにも直結する支援であることを再認識しました。そこから、洗ってほしいと思うものは何でも受け付ける、洗濯だけでなくクリーニング品も対応すると、支援の方針が決まりました。

長期の断水がもたらす洗濯環境の悪化

能登半島地震では、上下水道が被害を受け、広範囲で長期間にわたり断水が続きました。能登の地理的要因や道路の寸断により、復旧までに想像以上の時間がかかったのです。

避難所でも水が使えず、洗濯ができない状況が続きました。

水のタンクを使い、自分で給水をして二槽式洗濯機で必死に洗濯する人もいれば、車を運転して片道2時間かけて金沢市まで行き、コインランドリーを利用している人もいました。洗濯だけで1日が潰れてしまうという大きな負担を強いられていました。

災害時には、自宅の洗濯機が使えなくなるだけでなく、地域のクリーニング店も営業できなくなることがあります。実際に、能登半島地震ではクリーニング店が被災したため、一時的に地域で営業できるクリーニング店がなくなってしまいました。

ある女性は、「子どもの卒業式のために、倒壊した家からスーツを取り出したけれど、クリーニング店が営業しておらず、シワシワのまま出席するしかなかった。本当に悲しかった」と話していました。

たとえ災害時でも、色や形が整ったきれいな状態で服を着るシーンが必ずあるのです。

使い捨て前提で消費されていく衣類

DSATが最初に支援に入ったのは、石川県七尾市の100人ぐらいが避難していた避難所でした。

100人から1人10点の洗濯物を預かれば、1000点になります。そんな大量の洗濯物を洗ってその日にお返しするなんて、果たしてできるだろうか。そんな若干の不安を持ちつつ、避難所で洗濯物を回収したのですが、ふたを開けてみれば、20人ほどから約300点の洗濯物をお預かりするにとどまりました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください