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プーチン氏が“やられると困る”作戦とは? 「第三国でも攻撃するぞ」発言の真意 ウクライナのF-16登場を前に

乗りものニュース / 2024年4月18日 6時12分

F-16「ファイティングファルコン」戦闘機。写真はオランダ空軍の機体で、同国はウクライナに供与を明言している国のひとつ(画像:ウクライナ空軍)。

ウクライナが間もなく運用を開始するF-16戦闘機について、ロシアのプーチン大統領が近隣諸国から出撃したら、そこにも攻撃を加えると発言しました。しかし、振り返ると同じことはロシア自身が行っていたのです。

ウクライナ向けのF-16は現状何機ある?

 ロシアのプーチン大統領は2024年3月27日、NATO(北大西洋条約機構)諸国がウクライナへの供与を決めているF-16「ファイティングファルコン」戦闘機について「仮に配備されたとしても、戦車や装甲車などと同じように撃破するだけだ」と述べ、さらに「ロシアにはNATO諸国を攻撃する計画はないが、F-16が第三国の航空基地から使用されるのであれば、どこに配備されようとそれは攻撃対象となる」と発言しました。

 NATO諸国の軍事支援に対して攻撃や報復をほのめかす発言は、プーチン大統領を始めとしてロシア政府関係者からたびたび出ており、これまでも戦車や「HIMARS」ミサイルランチャーなどの供与が決定した際にも行われていました。そのため、特別な事情は見出せず、ある意味で通常の反応であると言えるのかもしれません。

 とはいえ、なぜロシアはF-16を第三国から出撃されたくないと考えているのでしょうか。もしかしたら、航空戦における「ある巧妙な手法」を回避したいという思惑が隠されている可能性もあるようです。

 ロシア空軍は、約1000機もの戦闘機を保有し、かつ強力な地対空ミサイル防空網を持っています。それに対し、ウクライナへの供与が決まっているF-16は2024年4月現在、60機程度であるため、同機の配備が即座にロシアにとって致命的になるとは考えられません。それでも戦闘機は、少数であっても地上戦にけっして小さくない影響を与える可能性を含んだ兵器です。だからこそ、ロシアにとってF-16は最優先で排除したい標的となるでしょう。

航空戦力撃滅の王道は地上撃破

 F-16は、地対空ミサイル陣地への攻撃能力や、敵戦闘機との空中戦に優れた機種ですから、数の上で優位なロシアにとってもF-16との空中戦は非常にリスクが高く、可能ならばやりたくないと考えていると筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は推測します。そのため、ロシアはF-16とは戦わず、それ以外で撃破する方法に力をいれる可能性があります。

 航空戦において敵の航空戦力撃滅をはかる最も効率的な方法は「地上撃破」することです。ロシアは、ウクライナの主要な航空基地を射程に収める、複数の巡航ミサイルや弾道ミサイルを保有しており、これらはF-16にとって最も大きな脅威となると考えられます。

 航空基地への攻撃は、現代戦においては航空優勢(制空権)を確保するために必ず行われる作戦の1つですが、これを無効化する方法が存在します。それが、第三国に戦闘機を駐留させ、そこを出撃基地としてしまうことです。

 たとえばポーランドの航空基地からF-16を発進させた場合、ロシアはNATO加盟国であるポーランドの航空基地を攻撃することがNATOの直接的な軍事介入を招いてしまうことにつながると考え、少なくとも攻撃をためらうはずです。

 このような、政治的に手出しのできない拠点を使用して航空戦を優位に進めるという手段は、実は珍しいことではありません。

 このような基地は「聖域」と呼ばれますが、これらを有効活用した過去の例としては朝鮮戦争があります。韓国側を支援した国連軍は中国領空への航空機侵入を禁止していました。そのため北朝鮮空軍だけでなく、それを支援するために参戦した中国義勇軍は、中国領内の航空基地からジェット戦闘機を出撃させ、国連軍側に空中戦を強いたのです。

ロシアも中国も、北朝鮮すら過去に実施済み

 一方、ロシア軍も「聖域」からの出撃を今回のウクライナ侵略で行っています。それは、最初期に繰り広げられた「キーウ包囲作戦」においてで、このときロシア空軍は中立国であるベラルーシを「聖域」として利用し、ヘリコプターを発進させました。

 そのことを鑑みると、プーチン大統領による前出の宣言、すなわちF-16が第三国の航空基地から使用した場合には攻撃するというものは、ある意味、自己矛盾しており正当性を欠いていると言わざるを得ません。

 なお、第三国であっても、戦闘機の発進基地として利用された飛行場は、戦争における合法的な攻撃目標となることは事実です。「聖域」とは、相手が攻撃を躊躇することを期待できる場合にのみ有効であり、プーチン大統領が攻撃宣言をした理由は、そのような手段を牽制したのだと受け取ることができます。

 ちなみに、将来ありうる台湾有事の際にアメリカが台湾を支援した場合、日本国内の嘉手納や普天間などといった在日米軍の基地は「聖域」になる可能性が高いでしょう。

 しかし、これは中国が日本の参戦を望まない場合に限られます。中国が日本の参戦を許容できる、ないし回避し得ないと判断した場合、在日米軍基地は攻撃対象となる可能性があるのは、変えようのない事実でもあります。

【地面スレスレ!】 ウクライナ戦闘機の「超低空飛行」(動画で見る)

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