そのホテルで生き延びられますか? 海外「火事から身を守るホテル選び」術とは タイで日本人も犠牲になった“見た目キレイ”な建物
乗りものニュース / 2025年1月11日 9時42分
タイのバンコクでホテル火災が発生し、日本人も犠牲になりました。海外では日本よりはるかに、宿泊施設が火災リスクと隣り合わせの場合も。火事から身を守るホテルを選ぶうえで、事前にできることがあります。
ネットの評価ではわかりづらい「リスクのあるホテル」
タイの首都バンコクで2024年12月29日に発生したホテル火災では、日本人2名を含む5名が亡くなりました。犠牲者の方に、心より哀悼の意を表したいと思います。
火災の原因についてはまだ詳細な発表がありませんが、今回このような犠牲者を出した背景には「小規模宿泊施設であったことからスプリンクラー設置の義務がなかった」「宿泊客が屋上に避難する、消防隊が道路に面した窓を割って進入するなど、外部への避難の導線、消火活動の導線が十分ではなかった」ことが、報道された内容から見てとれます。
日本においては、1980年に栃木・川治温泉の「川治プリンスホテル火災」、1982年に東京・赤坂の「ホテルニュージャパン火災」などの経験から、ホテルや旅館については法令で厳しい基準が設けられるとともに、「適マーク」の交付で利用者にもその安全性が周知される仕組みがとられています。
しかしバンコクを含む海外の都市、とりわけ新興国においては、火災に対しての体制が十分に整ったホテルばかりとは言い難いのが事実です。そしてそうした実情は、美しくデザインされたホテル公式サイトや、ホテル予約サイトの★の数では確認できません。
もちろん、著名な外資系ホテルを選べば、ある程度そうした不安は払拭できるでしょう。しかし予算に限りがある旅行では、そうしたホテルばかりを選ぶというわけにはいかないという事情もあります。
ここではインターネットを使った下調べで「火災による命のリスクをできるだけ避けてバンコクのホテルを選ぶ方法」について、ご案内したいと思います。
そのホテル、本当に新築ですか?
まずは、そのホテルが火災からの避難を考える上で適切な構造を備えた建物であるかどうかの判断です。今回火災を起こしたホテルは敷地いっぱいに建てられ、左右には隙間なく隣の建物が並び、正面の道路への避難は道路に面した2か所の出入口のみとなっています。
これが「宿泊客の屋上への避難」「消防隊の窓からの進入」となったことに深くかかわっているのではないかと思われます。
そしてホテルとしての開業は2022年とされていますが、一部報道によると、そもそも商業施設であったものをホテルに改築したもので、まったくの新築ではないようです。
じつはバンコクにはこうした“新築もどき”のホテルは少なくなく、避難経路の問題のほか、建物設備の老朽化による漏電火災などのリスクも考えられるところです。
こうした情報は、Googleマップ、Googleストリートビューで確認が可能です。とくにストリートビューで過去の画像にさかのぼると、建物が新築なのか、そもそもそこにあった建物を改装したものなのかもわかる場合があります。ぜひチェックしてください。
またGoogleマップを使うことで、ホテルの立地そのものが火災からの避難や消火に適しているかどうかを確認することもできます。
日本においては、土地の用途や敷地が接する道路の幅により、建物の高さが厳しく制限されています。しかしバンコクではそうした規制がゆるく、消防車が入れないような路地に面して高層ホテルが建つこともあり、万一の消火活動に不安が残ります。
また一部地域では狭い道が袋小路状になっているところもあり、袋小路の奥にあるホテルは近隣で火災が発生すると、逃げることが困難です。ホテル選びの際は「駅から徒歩何分」という距離だけでなく、立地もしっかり確認しましょう。
そこは本当に「ホテル」ですか??
ほか、ホテルの周辺環境がリスクをともなっているケースもあります。
たとえばバンコクの中心部には世界中から集まるバイヤーを相手にした衣料品の卸売り市場がありますが、その市場に隣接した土地には超高層ホテルが立地しており、ホテルの低層階のショッピングモールにも衣料品を扱う店舗が多数入居しています。
もちろん、こうした衣料品店街の上にホテルがあるという例は日本でもありうるでしょう。しかしバンコクでは、そうした衣料品店街で火を使う飲食店も軒を連ね、さらにはコンロを積んだ移動式の屋台も狭い通路を行き来しています。
こうした状況だけに、もしどこかで火災が起きれば、短時間で大きく延焼し、ホテルの宿泊客に大きな被害が出ることが考えられるのです。市街地中心部に立地するホテルを予約する際は、そうした周辺環境にも気を配るべきでしょう。
また宿泊施設の種類、とりわけホテル予約サイトに名を連ねる「サービスアパート(コンドミニアム)」の存在にも注意が必要です。
一部のサービスアパートは、ホテル同様のフロントがあり、長期宿泊者と短期宿泊者を管理しています。しかしなかにはオーナーが直接(もしくは仲介会社を通して)短期宿泊者に貸し出す「民泊」もあり、そうしたサービスアパートでは火災の際の避難誘導がきちんと行われるかどうか、不安があります。
これらのサービスアパートの判別は容易ではありませんが、ホテル予約サイトで「同じホテル名、住所なのに、別々のホテルとして複数掲載されていること」などを手がかりに判断できることもあります。
以上、万一の火災のリスクに備えた、バンコクでのホテル選びについてご案内しました。身の安全を守る旅行のためには、場所や設備、宿泊料金だけでなく、このように万一に備えて下調べし、不安に思える要素があれば候補から外すという選択の余地を残しておくことをおすすめします。
そしてこうした着眼点は、バンコク以外のタイの都市、さらには新興国全般にも共通する部分があるはずです。
【こっわ…】火災が起きたホテル「ぜんぜん新築じゃなかった件」(ストリートビュー)
【ストリートビューですぐわかる】これが「リスクの大きな立地のホテル」です
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