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「正解通りにできる子ども」は生き抜けない…今の学校がつらい子どもにできること【想定外の時代を生き抜く「見えない学力」の育て方 Vol.2】

Woman.excite / 2022年2月3日 8時0分

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■前回の木村先生のお話
これからの時代を生き抜くためには母親も子どもも、失敗しても立ち直れる「レジリエンス」が必要。しかし親が過保護になって必要以上に子どもに関わり続けてしまうとこの力は伸びません。そうならないためには…?

つい、子どもに口うるさく行ってしまうのは、ママが不安だから。ヘリコプターペアレント(ヘリコプターのように子どものまわりを旋回し、管理・干渉し続ける保護者を意味)のような子育てをしないためには、「周囲の同調圧力に負けずに、子どもを信用するが大切」と木村先生に教えていただきました。再び読者Aさんと木村先生の会話に戻りましょう。

■勉強しない子どもを信じることができる?

©hakase420 stock.adobe.com


木村先生:「勉強をしない」、「素行が良くない友だちと付き合ってる」…。こういったことを長い人生の中で経験することは、悪いことではないと私は思っています。子どもが成長する最中には、山あり谷ありであることの方が自然です。「わが子は今、回り道をしているけれども、最終的には自分らしく幸せな大人になっていく」と、信じていればいいんです。

Aさん:その状況で、子どもを信じるって、とても、とても、難しいと思います…。

木村先生:どうして? だって、自分の子どもでしょう? ゲームばかりしていても、親に迷惑をかけていても、自分の子どもでしょう? その子は、世界にたった一人しかいない、わが子でしょう? 

「自分には、最終的に帰るところがある」と、子どもが思えていること。これが、とても大切だと私は思うのです。そのためには、「どんなことがあってもお母さんは、あなたの味方だよ」と、ママ自身が子どもを信用するしか方法はないと思うんです。

■勉強しない子ども自身が困っている可能性もある


©tirachard stock.adobe.com


Aさん:子どもに、「お母さんは、あなたの味方だ」ということが伝わっているのかな? というのがわからなくて…。どう伝えればいいのでしょう?

木村先生:たとえば、子どもが「勉強したくない」と言ったとしましょうか。そんな時、親は心配だから「なんで?」と聞きます。聞かれた子どもは、自分の中に原因があると考えて、不安になったり、塞ぎこんだりしてしまうのです。

そんな時は、発想を転換する! HOWを使うんです。「どうしたら、あなたが楽しく勉強ができるようになると思う?」「どうしたら、あなたが勉強したいと思うようになるかなぁ?」と、子どもに聞いてみるのです。

Aさん:なるほど。声かけをそんなふうに変えていくことから始めればいいんですね。

木村先生:子どもに対して「指示命令」をするのではなく、「問いかけ」をしてみる。そして、その問の答えを子どもから言ってもらえる。親は、そんな大人になればいいのです。

「子どもが、勉強をしない」と親が困っているとしたら、子ども自身も、本当に困っていることが多いのです。「(本当は勉強したいと思うのに)、その方法がわからない、向き合い方がわからない」といった感じでね。


© zheng qiang - stock.adobe.com


子どもが困っている原因は、じつは本人の中ではなくて、案外、周りの環境の中にあるんです。私が校長を務めていた大空小学校(映画『みんなの学校』の舞台となった学校)には、学校に通えなくなった子どもがたくさん転校してきました。でも、大空には通えるんです。「違いは、何?」と聞くと、「空気が違う」と、子どもたちはみんな言っていました。

Aさん:空気…。子どもたちは、きっと、今の世の中や、学校の空気がつらいんですよね。

木村先生:今の学校の空気に入ろうとしたら、自分をガチガチのスーツケースの中に閉じ込めなければならない。でも、それを風呂敷に変えたら? 風呂敷は、どんな形にも自由自在になるでしょう? だから「子どもを育てる」のではなく、「子どもが育つ」。その周りにいる自分たち自身を少しずつアップデートしていこう! 大空は、そんな大人の集まりでした。

Aさん:子どもを主語にして、自分が変わっていく…、そんな感じでしょうか。


■10年後の社会で「生きて働く力」とは


©ohayou! stock.adobe.com


木村先生:そうですね。だからこそ、「勉強をしないさい」と子どもに言うときには、「勉強って、何だろう? 学びって、そもそも何だろう?」といったことを、ママたちには自分の頭で考えてみて欲しいのです。下記は、私が文部科学省から聞いた文言です。
「みんなと同じことができる」
このことが評価される時代は終わった。
他人と違うことに価値のある時代になってきた。

木村先生:文部科学省は10年に一度行う「学習指導要領」の改訂をし、小学校では2020年度から既に新しい学習指導要領(※)での指導が始まっています。

ところで、今の学習指導要領の下で育った子どもたちが大人になる、10年後、20年後は、どんな世の中になっていると思いますか?


© ohayou! - stock.adobe.com


Aさん:10年後、20年後…。そうですね、学歴があることよりも、「自分が何をやりたいか?」を追求していける子が生き抜いている気がします。

木村先生:本当にそうですね。今の学歴社会、受験社会が、どこまで通用するのかな? と、私は、思います。

Aさん:でも中学受験など受験が低年齢化して、ママたちがヒートアップしている現象もある気がします。この歪みが、どこで調整されるのか? いつ世の中が変化していくのかが不安です。

■「正解通りにできること」が目標?
木村先生:Aさんが世の中の変化を感じていないのであれば、残念ながら娘さんが通っている学校は、変化をしていない可能性もありますね…。

私の肌感覚としては、「全国の学校」という日本の全体像で見れば、随分と動き始めている印象です。一方で、旧態依然のまま、まったく変化をしていない学校があるのも事実です。たとえば、オリンピックがありましたが、現状はそのキーワードだった「多様性」や「共生」が、行動に繋がっていない人が多いのと似ているイメージでしょうか…。


©paylessimages - stock.adobe.com


木村先生:ところで、多様性ってどんなことだと思いますか? 私は、多様性とは「違う文化をリスペクトすること」だと思っています。子どもがふたりいたら、ふたりともが、それぞれ別の人間ですから違います。お互いがお互いをリスペクトできる。言い換えれば、それぞれの人が、それぞれの人をリスペクトできれば、すべての人が「自分の人生」を生きることができるのです。

具体的に考えてみましょうか? たとえば小学校1年生になったら「廊下は、右側を歩きましょう」と、習います。右側を歩くのが「正解」で、これまでは「先生に言われなくても、自主的に右側を歩けること」が評価されてきました。学校も親も「正解通りにできること」を、教育の目標に掲げてきたのです。

けれども、「正解通りにできる子ども(右側を歩ける子ども)」を育てたところで、多様性が尊重される社会で生きていけますか? これからの世の中には、左右がわからない人が歩いているかもしれないし、「左側を歩くことが正解」という文化の外国人の方だって増えていくでしょう。

Aさん:本当に、そうですね…。

木村先生:これから育てるべきは、「きちんと右側を歩ける子ども」ではなく、「道で人にぶつからないためには、どうすればいいか?を、自分の頭で考えられる子ども」なんです。

そのためには、「曲がり角では、立ち止まるようにしよう」など、日々生活の中で、都度、自分で考えていかなければなりません。

Aさん:そういう子を育てるためには、どうしたらいいんでしょうか?

【木村先生がママたちに伝えたい9のこと】
4.「自分には、最終的に帰るところがある」と、子どもが思えていることが大事
5. 指示命令ではなく、「あなたはどう思う?」と、子どもに聞いてみる
6. これから育てるべきは、自分の頭で考えることができる子である

「自分の頭で考えることができる子」を育てるためには、私はどうすればいいですか? 次回も、木村先生と一緒に考えます。

※文部科学省:学習指導要領「生きる力」
学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように、子どもの学びが進化します。新しい学習指導要領、スタート。


■お話を伺った木村先生の書籍
『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』

木村泰子(著)/青春出版社(1,540円(税込))
「見えない学力」が身につけば、結果として「見える学力」(成績)は上がる! 2万人が感動したドキュメンタリー映画『みんなの学校』(「不登校ゼロ」の公立小学校)で話題となった大阪市立大空小学校初代校長が明かす、子どもが自分で考え行動しはじめる「見えない学力」の育て方とは?
【木村泰子(きむら やすこ)先生】
映画『みんなの学校』の舞台となった大空小学校の初代校長。大空小学校は、「奇跡の公立小学校」「こんな小学校にわが子を通わせたかった」と言われる大阪の公立小学校。「子どもたちから学んだこと」をベースにした子育て論が、ママたちの支持を集める。

(楢戸ひかる)

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