病院の中に劇場が!閉館続くミニシアター…大阪で新たな“聖地”を 「扇町ミュージアムキューブ」の試み
よろず~ニュース / 2024年3月23日 7時20分
一見、普通の大きな病院だが…
2023年に大阪・扇町の関西テレビ前に現れた扇町ミュージアムキューブ。関西テレビや扇町公園の向かいに立つ巨大な病院の一部が演劇や映画のシアターになっている。
見たことのない組み合わせだが、一体どのような施設なのか。運営する株式会社シアターワークショップの、キャメロン瀬藤謙友さんに話を聞いた。
――総合病院の建物の一部が、映画館と劇場になっているんですね。
キャメロン:元々水道局の跡地で、民間に売却される時に条件として文化的な施設を建てること、というのがあったです。そこで購入を希望した医誠会さんから、劇場の建築やコンサルティングを行っていた弊社にお声がかかりました。
――珍しい施設だと思うのですが、特徴を教えてください。
キャメロンさん:250席、100席、50席のサイズが一緒にあるシアターコンプレックスです。複数の劇場があることは珍しくないのですが、他のシアコンはもっと客席が多くて、地元の劇団さんが使うには規模が大きすぎるんですよね。250席以下の規模になると、小さい劇団さんでも採算がとれることが多いんです。その他にも、小さな練習場や会議室もあるので、インスタレーションやワークショップなど幅広く利用していただいています。
――演劇の劇場だけでなく、映画館もありますよね。テアトル梅田や、京都みなみ会館など、関西でもミニシアターの閉館が続いている中で、なぜ映画館をやろうと思われたんですか?
キャメロン:演劇の劇場って1年に8割は可動しないと経営として厳しいんですよ。そうなると年間を通じて120団体必要で、これは埋まらないなと。だから3つある劇場のひとつを、1カ月のうち3週間だけ映画館にすれば継続的にお客様が呼べるのではないかと思いました。ずっと映画館にしておくのも、50席しかないと営業効率が悪くて。だから演劇やダンスなどの興行と映画を行き来することで、ギリギリ運営を成り立たせている感じ。機材購入も悩んでいたんですが、クラウドファンディングでご支援いただいて、興行ができるようになりました。
――映画館が1カ月のうちに消えたり現れたりするものだとは思いませんでした。
キャメロン:結構大変なんですよ(笑)。演劇のワークショップとして学生さんに段組みの作業をしてもらったりもしています。DIY色が強い劇場なので、シネコンを想像してご来館されると驚かれるかもしれません。チケットも自由席なんですよ。あと、演劇もやっている映画館として、ナショナルシアターライブなど映像収録の舞台も上映するようにしています。
――演劇って、特に小さい劇団の作品は難しそうというか、少しハードルが高いイメージです。
キャメロン:演劇をやっている人間からしても、演劇って難しいんですよね。映画みたいに、見逃してもまた同じものが観られるわけではない。例えばハムレットを見逃してしまったら次観に行く時には、演出も出ている俳優も全然違うし、何ならその日の俳優のコンディションでも違う。そこの再現性の無さをライブエンターテイメントとして楽しんでいただきたいです。
作品選びは、まずは劇場に足を運んでフライヤーを見るのが一番ですね。あとは談話室で気軽に「どれがおすすめですか?」と聞いてもらえばいいと思います。
――今後の展望は?
キャメロン:観客にいろんなアートの行き来をしてほしいです。映画観てる人が演劇を見たり、演劇を観てる人が映画を観たり。タルコフスキーの映画を観に来たお客様が、ナショナルシアターライブの予告をみて、演劇を見に来てくれて気に入ってくださったこともありました。それが当館の強みだと思うので、生かしていきたいです。あと、演劇、映画、アート総じて若い世代が育ってこない、というのが問題だと感じているので、スタッフのワークショップや若い団体へのサポート、映画事業でも若い監督作品をピックアップするなど、支援するような取り組みを考えています。
◇ ◇ ◇
歴史のある映画雑誌や演劇パンフレットが並ぶ本棚には、色褪せたフライヤーとチケットを整理した個人的な観劇記録ファイルも残されていた。
かつて扇町には小さい映画館があったそうだ。再び地元の生活の中に演劇と映画が根付くだろう。医療との連携の可能性にも期待したい。
(よろず~ニュース特約・ゆきほ)
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