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【賃上げ問題をどう考えますか?】答える人 立教大学経済学部・首藤若菜教授

財界オンライン / 2023年4月20日 18時0分

首藤若菜・立教大学経済学部教授/キャリアセンター部長

来年も再来年も賃上げが継続的に行われるかどうか

 ─ 日本は〝失われた30年〟と言われ、30年間賃上げがなされてこなかったわけですが、ここにきて原材料価格の高騰や人手不足を背景に、企業の賃上げの動きが高まっています。現在の賃上げ状況をどのように見ていますか。

 首藤 今年の春闘を見ますと、現段階で3%を超える賃上げが起こっています。わたしは、これは予想以上に賃上げが進んだなと思っていまして、ユニクロが日本国内の従業員の給与を最大40%引き上げ、サントリーホールディングスが約7%の賃上げに踏みきりました。大手企業が全体の賃上げを引っ張るような形で、日本経済に賃上げムードが起こったということは、わたしは高く評価されていいと思います。

 ただ、大事なことは、こうした賃上げの動きが今年だけで終わっては意味がない。来年も再来年も賃上げが継続的に起こっていくような社会をつくっていくことができるかどうかが、問われているのだと思います。

 ─ 問題は持続性あるものにできるかどうかですね。

 首藤 はい。とくに評価すべきだと思うのが、パートを含めて7%の賃上げをしたイオンです。イオンは組合の組織がしっかりしていて、正規・非正規にかかわらず賃上げすることを決めました。

 わたしはこれが非常に大きな意味があると思っていまして、例えば、昨年くらいからAI(人工知能)やデータサイエンティストなどのデジタル人材には1千万円払いますというような会社が出始めましたけど、必要なところに高い給与を支払うというのは合理性のあることだと思います。

 ただ、経済全体で考えますと、多くの人たちが賃金が上がって、豊かになり、消費をして、経済を回していくという仕組みが必要なわけです。そう考えた時に、一部の優秀なデジタル人材に1千万円払うことも確かに必要なことですが、これが日本全体の底上げにつながるかと言ったら、そうとは限りません。

 ─ 一部の人に限定された賃上げだと。

 首藤 ですから、わたしは大事なことは、日本全体の底上げにつながる賃上げができるかどうかだと思うんです。

 先ほどのユニクロも最大40%賃上げしますという話で、皆が皆40%賃上げされるわけではありません。会社の中で40%も賃上げされる人って何%いるんですか? という話なんですね。結局、一部の人だけが賃上げされるというのではなく、全体の底上げができるかどうかが、日本経済にとってすごく重要な話だと思います。

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 ─ トータルで底上げにつながる話じゃないと意味がないということですね。

 首藤 やはり、大事なことはベースアップ。基本給の底上げが大事なんですね。今は幸い、組合側も経営者側も賃上げが大事だよねという意識になっていますけど、これが毎年続くかどうかが重要です。

 日本にとっては、物価が上がっても安心して暮らしていけるような社会をつくっていくことが大事で、そのためには、やはり、物価上昇分を上回る賃上げを実現するしかないと思います。それが日本の最大の成長戦略なのではないかと思います。

 ─ 本当ですね。首藤さんは厚生労働省などの審議会の公益代表委員という立場でもありますが、こういう話は審議会にもしているんですか。

 首藤 はい。やはり、今まで民間に任せても賃上げは全然実現しませんでしたから、ある程度は政府が政策として打ち出すことが必要だと思います。岸田政権は「人への投資」という観点でかなり動いていますし、今までの政権よりはかなり踏み込んでいると思います。

 今年一気に起こった賃上げムードを来年、再来年と、どこまで継続していくことができるのか。それが政府・企業双方に問われていると思います。

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