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日本再生をどう進めていきますか? 答える人 日本総合研究所会長・寺島実郎

財界オンライン / 2024年4月25日 7時0分

寺島実郎・日本総合研究所会長

共通するキーワードは「1994年シンドローム」

 ─ 〝失われた30年〟と言われ、長く停滞が続いてきた日本経済ですが、日経平均株価は史上最高値を更新するなど、今は大きな転換点にあります。寺島さんは、いかに日本再生を進めていくべきだと考えますか。

 寺島 日本再生を考える上でのポイントは三つあります。一つは外交・安全保障、もう一つは経済・産業政策、そして、政治改革の三つです。

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 そこに共通するキーワードが「1994年シンドローム」という言葉だとすれば、この30年で特に世界における日本の埋没が顕著になってきました。

 1994年というのは、世界のGDP(国内総生産)に占める日本の割合が最も高いピークだった年で、17.8%を占めていました。そこから徐々に減少し、まだIMF(国際通貨基金)の最終確定値がまだ出ていませんが、昨年は4%になり、ひょっとすると3%台に落ちるかもしれない状況です。

 ─ それくらい日本経済が埋没してしまったと。

 寺島 ええ。この3%という数字は、明治維新を迎えた頃と戦争に敗れた直後、1950年が3%程度だったと推計されています。要するに、元の木阿弥ではありませんが、日本はそれくらいの位置に原点回帰したと言ってもいいくらい、世界における日本経済の存在感低下が明らかだということです。

 これは政治の埋没と経済の埋没が相関しているといえます。例えば、1994年という年は皮肉にも、政治改革四法(小選挙区比例代表並立制と政党交付金の導入を柱とする政治改革のための法律群)が成立した年でした。

 いいか悪いかは別にして、今の政治改革の議論と、当時の政治改革の議論の何が違うかといえば、産業界の持つ意味が変わっているということです。

 ─ それはどういう意味ですか。産業界と政治の関係はどう変わったのか?

 寺島 つまり、あの頃は1980年代から始まった土光臨調(第2次臨時行政調査会)をはじめとして、行政改革や政治改革など、あらゆることに経済人が迫力とにらみを持っていた。土光敏夫さんにしても、凜として政治をにらみつけている力がありました。

 しかし、今、本当に経済人として政治改革を考えた時に、例えば、政治の在り方について発言できるほどの緊張感を持たせ、政治はこうあるべきだということを問いただすほどの構造になっているのか?

 様々な経済団体を見ても、いつの間にか忖度経済のようになっていて、政府に対して経済の在り方を問いかけるのではなく、むしろ依存する構図がものすごく重くなっている。つまり、半導体に代表されるように、産業界が補助金や助成金、給付金を期待する力学の中で経済が動いているわけです。

 ─ なるほど。政府依存の構図になっている。

 寺島 半導体だけではありません。突然、政府は国産旅客機の開発を目指すと言い出しましたが、そうであれば、なぜ、「旧MRJ(SJ)」の開発をやめたのか? ということになるし、コロナ禍の3年間を思い出してみれば分かりますが、日本はコロナワクチン一つつくれない国になってしまったんです。

 そういうことへの反省もないし、日本が今、国際社会からどのように言われているかというと、日本はひょっとしたら、一瞬だけ輝いていた奇妙な国ということで歴史の中に埋まってしまうのではないかと、そう言われ始めています。




政治改革の先を見据えた真剣な議論を

 ─ 何が今の日本に欠けているのか。そして、どう動くべきなのか。

 寺島 われわれは責任ある立場の大人の日本人として、次元の低い政治批判をするのではなく、今の日本が政治改革の先にどういう政治を実現し、どういう政策を実現したいと思っているのかという議論を真剣にしなければなりません。

 今、日本で起こっている政治改革に関する議論というのは、分かりやすく言うと、政治資金の不記載や一体何にお金を使っていたのか? という次元の議論だけが繰り返されている。

 野党にも、これからの日本に求められる政策はどういうもので、外交・安全保障にしろ、経済・産業政策にしろ、自民党に変わって、こういうものを政策でやるべきだという議論が一つもありません。

 ─ 野党にも無いし、メディアからの質問も無い。

 寺島 そういうことです。

続きは本誌で

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