かつて火星に生命が存在した可能性 東北大の研究
財経新聞 / 2024年3月4日 18時17分
現在の火星は大気が希薄で寒く、地球のようにいたるところに生命が満ち溢れているとは考えにくい。実際に現在まで何度も探査機を送り込み、調査を継続しているにもかかわらず生命発見の報は聞かれない。
だが今から36ないし38億年前の火星には、まだ十分な大気が存在していた可能性があり、そこでは生命が誕生していた可能性もありえるという。東北大学は2月13日、かつての火星で生命の材料となる分子の生成が行われていた可能性について、検証を行った結果を発表した。
今回の研究では、36~38億年前の火星大気モデルを仮定し、アミノ酸や糖などの生命材料分子の原料となるホルムアルデヒドがそのような環境下で生成され、蓄積される可能性について検証。大気に二酸化炭素、水素、一酸化炭素が豊富に含まれているという仮定の下で、コンピューターシミュレーションを実施している。
従来、原始地球環境を想定した同様のシミュレーション事例は存在したが、原始火星環境を想定したシミュレーション事例はなかったという。このシミュレーションには、二酸化炭素と水が太陽光によって化学反応を起こすモデルが用いられ、原始火星環境でホルムアルデヒドがどの程度生成されたか推定が試みられている。
検証の結果、原始火星環境下における水素の大気中濃度が6%の場合、ホルムアルデヒドの生成量は原始地球環境下における生成量の50倍にも達するとの結論を得た。研究ではさらに原始火星環境における海洋の存在や火山活動の影響にも言及し、かつての火星でホルムアルデヒドが継続的に生成され、蓄積された可能性が高いことが示された。
ホルムアルデヒドは、アンモニアなどとの反応でアミノ酸を形成するため、これが継続的に蓄積されたことが証明されれば、原始火星で生命が誕生していた可能性も膨らんでくる。今回の研究はその可能性を後押しするものだが、火星での生命存在の確証が得られたわけではない。人類が宇宙での孤独から解放される日はいったいいつになるのだろうか?
なお今回の研究成果は、科学誌「Scientific Reports」で2月9日に公開されている。
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